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【業界動向・海外】アメリカ政府は中国資本のEV「ポールスター」販売を不認可に、米中覇権争いの最前線

ポールスター(Polestar)の米国販売不認可というアメリカ政府の決定を背景に、メルセデス・ベンツなど中国資本が入る自動車産業全体に波紋を広げている安全保障上の懸念と、それが日本市場に与える影響について解説

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2026/06/29

 6月25日、アメリカ政府はスウェーデンを拠点とするEVメーカー「ポールスター(Polestar)」に対し、2027年モデル以降のアメリカ国内での販売を不認可とする決定を下した。ポールスターはスウェーデンのボルボ・カーズと、その親会社である中国・吉利汽車(ジーリー・オートモービル)の合弁により誕生したブランドである。これは、次世代モビリティーを巡る米中間の覇権争いと、安全保障を理由とした規制強化を示す判断として第2資本などに中国が介入しているカーメーカーに波紋を広げるだろう。



販売不認可の背景
データ安全保障と関税の壁

 アメリカ政府がポールスターの販売を不認可とした最大の理由は、コネクテッド機能に組み込まれた中国系ソフトウェア及びハードウェアに対する国家安全保障上の懸念からである。現代のEVは「走るスマートフォン」と言われるように、膨大な車両データや周囲の環境データ、ドライバーの個人情報を常時収集・通信している。

 米通商代表部(USTR、通商権限を持つ)は、すでに中国製EVに対する関税を従来の25%から100%へと大幅に引き上げる措置を実施している。しかし、ポールスターはスウェーデンに本社を置き、アメリカ国内(サウスカロライナ州)でも生産を行っているため、単純な関税障壁だけでは対応しきれない部分があった。今回の不認可措置は、資本やデータ管理の根っこに中国企業が関与している車両そのものをインフラ網から排除する狙いが明確に表れている。



過去の規制との共通項
通信インフラから自動車へ

 この動きは、かつてアメリカが中国の通信機器大手である華為技術(ファーウェイ)に対して行った排除措置と似ている。2010年代後半、アメリカは同盟国を巻き込み、5G通信網から中国製機器を排除した。自動車がIoT化し、都市のインフラシステムと深く結びつく現代において、規制の対象が通信基地局からEVへとスライドしたということなのだろう。

 また、自動車産業における貿易摩擦としては、1980年代の日米自動車摩擦が思い起こされる。当時国産車の対米輸出急増に対し、アメリカは保護主義の姿勢を強め、国産カーメーカーは現地生産化(VRA、輸出自主規制の受け入れと現地工場の建設)へと舵を切った。しかし、今回のポールスターに対する措置は、雇用確保や貿易赤字の是正といった当時の経済的要因以上に、「データの主権」と「サイバーセキュリティー」という安全保障が中核にある点が大きく異なる。過去のハードウェア中心の摩擦とは違う争いである。



アフターマーケットとサプライチェーンへの波及効果

 この政治的決定は、現場のサプライチェーン及び自動車アフターマーケットにも影響を及ぼしうる。
 第1は部品調達の分断である。ポールスターの車両を構成する部品、特にバッテリーセルや電子制御ユニット(ECU)の多くは中国のサプライチェーンに依存している。販売が不認可となることで、すでに流通している既存モデルの交換部品の供給網(純正部品、優良部品を問わず)がアメリカ国内で断たれる、あるいは供給に大幅な遅延を招く可能性が高い。部品供給を担う商社にとっては、在庫管理や調達ルートの見直しを迫られるだろう。

 第2に整備現場における技術的な障壁である。整備や鈑金塗装作業では、スキャンツールを用いた故障診断や修理後のエイミング、キャリブレーション作業、ソフトウェアのアップデートなどが切っても切り離せない。メーカーからの公式なソフトウェアサポートやデータ連携が遮断された場合、現場の技術者は安全な状態への修理を担保できなくなる。



多極化するEV市場と今後の行方

 アメリカ市場から事実上の締め出しを受け、中国資本を背景に持つEVメーカーは、欧州や東南アジア、南米、そして日本市場へのシフトをさらに加速させることが予想される。しかしEUもまた中国製EVに対する相殺関税の動きを強めており、グローバルなビジネス展開はさらに難しい舵取りを迫られる状況にある。

 自動車は単なる移動手段から社会資本へと変化しつつある。技術革新のスピードに法規制や国際政治が後追いする状況が続く中、カーメーカーやサプライヤーは、単一の調達網に依存しない“地産地消型”のサプライチェーン構築とデータ管理の透明性がこれまで以上に求められる(ただし、中国などのアジア拠点に製造の舵を切っている現在、国際社会として規制をかけることは自国の首を絞めることにもなりうるだろうが……)。技術者から経営者に至るまで、国際情勢の変動が目の前の実務に直結する時代であることを今回のポールスター不認可の決定は示唆している。