JOURNAL 

シネマエンドレス「宝島」

  • #一般向け

2025/09/26

アメリカ統治時代の沖縄を駆け抜けた若者たちの衝撃のエンタメ!

 沖縄がアメリカだった時代。米軍基地から奪った物資を住民らに分け与える“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちがいた。いつか「でっかい戦果」を挙げることを夢見る幼馴染のグスク(妻夫木聡)、ヤマコ(広瀬すず)、レイ(窪田正孝)の3人。そして、彼らの英雄的存在であり、リーダーとしてみんなを引っ張っていたのが、一番年上のオン(永山瑛太)だった。すべてを懸けて臨んだある襲撃の夜、オンは突然消息を絶った。残された3人は、刑事、小学校教師、ヤクザになり、オンの影を追いながらそれぞれの道を歩み始める。しかし、アメリカに支配され、本土からも見捨てられた環境では何も思い通りにならない現実に、やり場のない怒りを募らせていた沖縄全体の感情がある事件をきっかけに爆発する。

 第160回直木賞を受賞した真藤順丈『宝島』(講談社文庫)を原作とした本作。数々の困難を乗り越え、邦画では破格の総製作費25億円を投じた日本人の心に問いかける超大作が公開。


©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

サブカルおじさんの推しどころ

 映画「るろうに剣心」シリーズなどの大友啓史監督が、アメリカ統治下の沖縄で生きる若者たちが自らの手で未来を切り開こうとする姿を描き出した青春と革命の物語。タイトルから麦わらの一味的な冒険活劇を期待するとカウンターパンチを食らう。これまであまり扱われてこなかった沖縄がアメリカだった1952 ~ 1972年を入念な時代考証で徹底的に再現しており、当時の沖縄での日本人の理不尽で不当な扱いに胸が痛くなってくる。エキストラ延べ2,000人が出演した「コザ暴動」の再現シーンは圧巻の一言。日本人のアメリカへの怒りが形として出た実際の事件だが、まるでその場にいるような臨場感に沖縄の気温と湿度を感じるだろう。重いテーマである一方で、エンタメとしても完成しており、ストーリー、演出、俳優陣の完成された渾身の演技に、191分の本編が短く感じられるほどである。本土復帰から53年、戦後80年。今一度戦後を考えさせられる大傑作。膀胱炎にはご注意を。

監督:大友啓史/配給:東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/公開中

担当記者

青山 竜(あおやま りゅう)

東京編集課所属。映画・音楽・芸術あらゆる文化に中途半端に手を出し、ついたあだ名は「サブカルくそおじさん」。

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