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千葉豪雨・記録的短時間大雨に襲われた千葉 ——鈑金塗装工場を襲った床上浸水

ジェットストローク(千葉県鎌ケ谷市)の佐々木裕一氏が当時を語る

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2026/09/24


BP工場を襲う異常気象 ―― 水害リスクと「浸透マス・水濡れ保険」に見る自衛の処方箋


8月13日、お盆休みの日本列島を大気の状態の不安定化による猛烈なゲリラ豪雨が襲った。特に千葉県北西部では記録的な短時間大雨に見舞われ、道路の冠水や河川の増水が相次いだ。鎌ケ谷市周辺でも避難指示にあたる警戒レベル4、さらには夜にかけて命の危険が迫る警戒レベル5が発令されるほどの事態となった。

局地的な豪雨は、インフラの排水処理能力をあっという間に超え、都市部や住宅地に内水氾濫を引き起こした。この豪雨という異常気象の被害に直面したのが、千葉県鎌ケ谷市で鈑金塗装や車両カスタムを手掛けるジェットストローク(佐々木裕一社長)である。

災害発生当時、佐々木社長は仕事で愛知県名古屋市に滞在していた。スマホには鎌ケ谷市内の豪雨による警戒レベルを知らせるアラームがひっきりなしに届いている状況だったが、遠方の地からでは工場へ駆けつけることは物理的に不可能であった。急遽、工場長と佐々木社長の息子に現場の確認を依頼し工場へ向かってもらったが、彼らが到着した時には、すでに敷地内は冠水状態に陥っていたという。

豪雨で停電した工場の不幸中の幸い



夕方16時から17時にかけて猛烈な雨が降り注ぎ、夜になってもレベル5の警戒が続いていた。さらに、ジェットストロークの周辺エリア一帯は豪雨の影響で翌朝まで停電に見舞われており、工場長らは懐中電灯の明かりだけを頼りに、暗闇の店内や工場内を捜索するという緊迫した状況に置かれた。

実際の被害は、床上12cmの浸水だった。商談ルームや工場、さらには撮影スタジオまでもが水に浸かった。スタジオの石膏ボードの壁は水を吸ってしまい、保険を適用しての交換を余儀なくされる見通しだ。ただ、幸いなことに工場内に流れ込んだのは下水などの汚水ではなく、雨水と工場の裏手にある畑から流れ出た泥水であった。そのため、9月現在の店内は特に大きな臭いもなく、通常に戻りつつある。トイレ関係の水没が免れたこと、そして商談フロア以上の高さまで浸水しなかったことで、壊滅的な大被害はギリギリのところで回避されたと言える。




また、店内だけでなく設備面でも被害の拡大を防いだ不幸中の幸いがあった。豪雨発生時、前述のように鎌ヶ谷エリア全体が停電していたため、工場内の電子機器やリフト関係への通電が絶たれていたのだ。もし通電したまま水没していれば、漏電やショートによる致命的な機械故障を引き起こしていた可能性が高いが、停電のおかげでこれらの設備は無事であった。また、預かっていた顧客の車両への被害も少なかったという。

1ヶ月前の決断が被害を食い止めた。浸透マスと自動排水ポンプの威力




実は、ジェットストロークが冠水被害に遭うのは今回が初めてではない。ここ10年間で同様の水害を2回経験している。近隣の工場ではそこまで大きな被害が出ていないにもかかわらず、同社が度重なる冠水被害に遭う背景には、店舗の立地と地形的な問題が関係する。

工場の裏手には一段高い場所に畑が広がっており、大雨が降ると工場敷地内に向かって大量の雨水と畑の泥が流れ込んでくる地形構造になっているのだ。敷地内に降った雨や流れ込んだ水は、原則としてその土地の人間が処理しなければならない。過去に市などの行政に対応を相談したこともあったが、民有地への対応には限界があり解決には至らなかった。 「責任を問うようなことはしたくない。でも、これだけの対策をしているということは伝えたい」と佐々木社長は語る。シンナーなどの溶剤を扱うBP工場として近隣への配慮を怠らず、良好な関係を維持するためにも、自社の責任で水害対策を行う道を選んだ。

同社は今回の豪雨のわずか1ヶ月前、約80万円の自費を投じて水はけの改善工事を行っていた。行政からの補助金や助成金に頼らず、工場裏手に200〜300リットルの容量を持つ浸透マスを設置し、溜まった水を強制排出するためのポンプを2基増設したのである。この1ヶ月前の決断が見事に功を奏した。ポンプが強制排水を行った結果、水かさは床上12cmにとどまったのだ。もしこの事前の設備投資がなければ、甚大な被害を受けていたことは確実である。




千葉県を襲った豪雨を前に設置した浸透マスが被害を最小限に抑えた


BP工場が今すぐ取り組むべき水害対策 —— 嵩上げと「水濡れ補償」の重要性



被災後、工場と事務所の完全復旧には2日を要したが、ジェットストロークは工場の作業の手を止めることはなかった。裏手を含めた泥かきや片付けはすべて自社スタッフで行ったが、SNSで被害状況を発信したところ、ボランティアによる支援の申し出も寄せられたという。

今回の経験から、佐々木社長は同業者に向けて2つの具体的な教訓を話してくれた。

1つ目は、工場内の「かさ上げ」の徹底である。床に直接部品や機材を置くのをやめ、パレットなどを活用してすべての物品を10cmほど浮かせて配置する大雨対策への切り替えを検討している。事前の工夫次第で、床上10cm程度の浸水による物品被害をゼロに抑えることができるからだ。

2つ目は、「保険の選び方」である。佐々木社長が強く推奨するのは、火災保険の中でも「壊れていなくても、濡れた時点で支払われる(水濡れ補償)」特約の付帯だ。現在、同社が会社所有の設備にかけている保険について、保険会社が被害状況を調査し適用可否の判断を進めている。建物専用のアジャスターによる査定は写真不要で進むなど比較的スムーズだが、車両に関する保険査定は非常に厳しいという実態もあるという。

だからこそ、「何があるか分からないからこそ、濡れた時点で支払われる保険」に加入しておくことが、工場存続の命綱となる。 気候変動により、これまでの常識が通用しない短時間のゲリラ豪雨は今後も頻発するだろう。行政のインフラ整備を待つのではなく、自らの敷地の地形リスクを把握し、「ポンプの設置」や「10cmのかさ上げ」、そして「水濡れ対応の保険加入」といった物理的・金銭的な自衛策を講じること。それが、激甚化する異常気象からBP工場を守り抜くための現実的な処方箋と言えるのではないだろうか。