JOURNAL 

シネマエンドレス「ペンギン・レッスン」

  • #一般向け

2025/11/27

人生を諦めた英語教師、ペンギンと同居中

 1976年、軍事政権下のアルゼンチン。夢を見失い、人生に希望を見いだせずにいた英国人の英語教師・トムは、名門寄宿学校に赴任する。混乱する社会と手強い生徒たちに直面する中、旅先で出会った女性とともに、重油まみれの瀕死のペンギンを救うことに。女性には振られ、残されたのはペンギンだけ。海に戻そうとしても不思議と彼の元に戻ってくる。こうして始まった奇妙な同居生活。この偶然の出会いが人生を大きく変える奇跡になる。トムは「サルバトール」と名付けたそのペンギンと、不器用ながらも少しずつ心を通わせていき、本当に大切なもの─人生の意味と、生きる喜び─を取り戻していく。

 実在の教師トム・ミッシェルが、自らの体験を綴った回顧録「人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日」(ハーパーコリンズ・ジャパン刊)を、「フル・モンティ」のピーター・カッタネオ監督が待望の実写化。

© 2024 NOSTROMO PRODUCTION STUDIOS S.L; NOSTROMO PICTURES CANARIAS S.L; PENGUIN LESSONS, LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

サブカルおじさんの推しどころ

 犬とペンギンが大好きな筆者からしたら、本作は大きな心の癒しとなった。ペンギンのファン・サルバドールの愛らしい様子に心がゆるむ。ある事情により人生に希望が持てない主人公がペンギンとの出会いを機に生徒や学校の人々と交流を深め、押し殺していた自分の気持ちに向き合うことになるやさしい作品。ただ一匹の愛らしい動物がいるだけで人はこんなにも穏やかになれるし、円滑に会話も進む。物言わぬ動物のパワーは偉大である。大した事情もないのに筆者のような生き方をする人間に足りないのは仕事へのモチベーションでもなく、人並みの給与でもなく、定時上がりでもなく―ペンギンだったのだ! と強く思い込みたくなるほどペンギンが愛おしい。本作は実話に基づいているだけに、この東京編集部がある北区赤羽にもペンギンがいるかもしれない。だが、退社した午後10時以降の赤羽で見かけるのはペンギンのようにヨチヨチ歩きの酔っぱらったおっさんしかいない。愛おしくない!

© 2024 NOSTROMO PRODUCTION STUDIOS S.L; NOSTROMO PICTURES CANARIAS S.L; PENGUIN LESSONS, LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

監督:ピーター・カッタネオ/配給:ロングライド/ 12月5日(金)より新宿ピカデリー TOHOシネマズ シャンテほか全国公開

担当記者

青山 竜(あおやま りゅう)

東京編集課所属。映画・音楽・芸術あらゆる文化に中途半端に手を出し、ついたあだ名は「サブカルくそおじさん」。

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