JOURNAL 最新ニュース
自工会・片山正則会長、「環境性能割」単純廃止やガソリン税暫定税率付け替えの断固反対を表明
2025年9月度の定例記者会見を開催、正副会長が「ジャパンモビリティショー2025」への想いを発信
2025/09/22
片山会長は冒頭の挨拶で、アメリカ合衆国による関税率引き上げ(いわゆる「トランプ関税」)に触れ、「9月16日より新たな関税率が適用となった。自動車および自動車部品関税として適用される税率15%は、米国が他国に課す税率と比較しても劣後したものではなく、日米両政府関係者のご尽力に重ねて感謝申し上げる」と、日本政府への謝意を述べた。
しかしながら、「サプライチェーン全体を含めた日本の自動車産業への壊滅的な打撃は緩和されたが、関税がもたらす自動車産業へのインパクトは依然大きく、自動車メーカーのみならず、サプライチェーン全体にもその影響が及んでいる」と指摘。さらなる議論の継続を要望している。
自工会の片山正則会長
続いて、同日の会見後に詳細が公表された「令和8年度税制改正要望」について説明。最重点要望として自動車取得時の「環境性能割」単純廃止を挙げたほか、ガソリン税暫定税率廃止については「代替財源を車体課税に求めるようなことは本末転倒であり、自工会としてはユーザー負担増に繋がることは断固反対」と強調。「そもそも自動車重量税にも暫定税率は残存しており、これまでの課税の経緯からも、重量税の暫定税率の扱いも含めて議論がなされるのが筋」と付け加えた。
「令和8年度税制改正要望」の重点要望事項概要
また、2024年1月の片山会長就任時より掲げている「7つの課題」について、日本経済団体連合会(経団連)モビリティ委員会において今秋に各産業へ説明すべく準備中であること、自動車業界全体での「賃上げの好循環」加速のため、9月上旬に日本自動車部品工業会(部工会)と連名で、適正取引のさらなる推進を要請するメッセージレターを両会会員各社に発信したことを報告している。
自動車業界「7つの課題」
そして、10月30日(木)より11月9日(日)まで(プレスデーは10月29・30日)に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催する「ジャパンモビリティショー2025」について言及。
「モビリティは単なる移動手段ではない。人々の心を震わせ、暮らしの記憶や価値観さえも形づくってきた。私たちはモビリティが持つその力を信じ、不確実な時代だからこそ、未来への希望を皆さまにお届けしたい」という想いを込めるとともに、「今回はクルマ愛、バイク愛にもスポットを当て、クルマやバイクをこよなく愛するファンの皆様にもワクワクしていただけるコンテンツを用意するので期待してほしい」と訴えている。
さらに、記者会見へ同席した副会長6人からもそれぞれ、ジャパンモビリティショーにかける想いと、個社の出展内容概要が述べられた。概要は以下の通り。
「ジャパンモビリティショー2025」ポスターパネルを前にサムアップする自工会正副会長
【三部敏宏副会長(本田技研工業社長)】
「FUTURE」、「CULTURE」、「CREATION」の3本の柱を中心に、2023年ショーで好評だった未来の展示体験に加えて、過去現在の展示体験へも注力することで、乗り物好きな人も、未来の暮らしや姿を夢見ることが好きな人も、大人も子どもも、まだあまり興味を持っていない方も含め、必ず一人一人が行きたいと思えるモビリティショーにしていきたい。
ホンダの出展テーマは「「夢」を形に夢の力が生み出した「陸上・海・空」へと広がるホンダのモビリティ」。ホンダが目指すモビリティの形を陸上にとどまらず、海、さらには空へと広がる世界観を楽しんでいただけるブースを企画している。
自工会の三部敏宏副会長
【鈴木俊宏副会長(スズキ社長)】
1954年に全日本自動車ショーとしてスタートし、1964年に東京モーターショーに、そして2023年には、自動車だけでなく幅広いモビリティを対象とするイベントへと進化を遂げたジャパンモビリティショーは、スズキにとっても、常にその時代の挑戦を形にする大事なステージだった。
世界情勢や産業を取り巻く環境の先行きが不透明な今だからこそ、スズキは既存の枠にとらわれない発想と、創業以来培った小さなクルマづくりの精神で、未来のモビリティづくりに挑戦し、ワクワクのアンサーを進化させる。
私が委員長を務める自工会軽自動車委員会では、11月8日に東京ビッグサイト正面の石と光の広場で、「軽トラ市inジャパンモビリティショー2025」を開催する。北は岩手県から南は宮崎県まで、全国各地の軽トラ市団体の皆様に、地元ならではの魅力あふれる商品をたくさん持ってきていただく。また復興支援のため、自工会で応援している輪島朝市の皆様にも出展していただく予定。
自工会の鈴木俊宏副会長
【佐藤恒治副会長(トヨタ自動車社長)】
前回、未来のモビリティの姿を見せるということで多くの展示があったが、その時いただいた声で一番大きかったのは「クルマそのものの魅力にもっともっと触れたい」という声だった。
今回のショーの中では、モビリティそのものが持つ魅力をしっかり発信していこうということで、展示にいろいろな工夫をしている。リアルなものだからこそ伝わる想い、クルマそのものと、その周りに集う多くのクルマ好きの人たちの熱い気持ちを、現場で現物をご覧いただいて、元気になっていただきたい。
自工会の佐藤恒治副会長
【イヴァン・エスピノーサ副会長(日産自動車社長)】
今回、どこか1社のブースだけではなくぜひ各社のブースを回って見ていただきたい。ブースも展示車もいろいろある。きっとどこかのブースでは、皆さまの描く未来が見えるはず。
将来のゲームの世界を飛び出して、リアルな世界を旅してみたい、デジタル世代のお子さんたちには、最新のEVがある。また、山、海、思い出作りに行きたいアクティブな若いご家族の方々には、広々とした便利なミニバンがある。家を出てもっと気軽に自分の行動範囲を広げたいという方には、運転のしやすさ、そして安全装備にあふれた軽自動車がある。子育てがもうすぐ終わる、これから第二の人生を楽しもうという方は、若い頃に憧れたスポーツカーに乗ってみたらどうだろうか。
自工会も各社の皆さんも、このショーをあらゆる世代の方々に楽しんでいただけるものにしようと準備を進めている。もちろん、日産ブースもたくさんの趣向を凝らしているので、ぜひ期待してほしい。
自工会のイヴァン・エスピノーサ副会長
【設楽元文副会長(ヤマハ発動機社長)】
今春、原付1種の新区分の基準が追加されて、二輪車は大きな変革期を迎えている。 国民生活に密着したこの領域は、消費財としてのモーターサイクルと共に、この国の文化としてしっかり根を張っていけるよう業界一丸となって、活性化に取り組んでいきたい。ジャパンモビリティショーでは国内二輪4社合同で、その一端をご理解いただけるような企画を準備している。
ヤマハ発動機は今年、創立70周年を迎えている。今回のモビリティショーでは、ワクワクする未来を探しに行こうというコンセプトのもと、弊社の価値創造の礎である、人間研究に基づいた研究開発中のプロットモデルなど、 多彩な出展を計画している。
人間中心のものづくりで、人々の楽しむ意欲、挑戦する心の背中を押すヤマハ発動機の一端を、ヤマハ株式会社ミュージックと共に、ボーカロイド・初音ミクさんなどを起用して、若い世代にも訴えていけるようなショーを展開する。
自工会の設楽元文副会長
【松永明副会長・専務理事】
ジャパンモビリティショーは、単にそれぞれの会社が自社の車を展示する会ではない。各社の垣根を越えて「One Team」として日本の自動車産業が未来に向かう姿を示すもの。GX、DX、知能化、そして多様なサービスへと広がるモビリティの可能性は、私たちの暮らしをより豊かに、そして便利に変えていくと確信している。
自動車産業は今、100年に一度の大変革期に直面しています。しかし、私たちはこの変化を悲観するのではなく、成長の「チャンス」と捉え、新たな挑戦を続けていく。
自工会の松永明副会長・専務理事
(文・写真=遠藤正賢 図=日本自動車工業会)