JOURNAL 

プラスワンツールの思いと製品

  • #トピックス

2026/08/06

左から、中村圭介氏、高城宏光社長、野呂幸矢社長
左から、中村圭介氏、高城宏光社長、野呂幸矢社長


 「現場で働く職人の方々の生産性向上と働く環境を良くしていく」を理念に掲げ、製品の開発・発売や講習会を実施しているプラスワンツール。今回、製品開発に深く携わる高城宏光社長と技術開発を担当する中村圭介氏、そして同社製品の宣伝に携わっているNcraft野呂幸矢社長に話を聞いた。


小さな工夫で鈑金を身近に 


 自動車整備業界において、鈑金塗装の技術継承と若手人材不足は慢性的な課題だ。こうした中、独自の視点から技術の底上げと参入の敷居を下げることに取り組んでいるのが、高城宏光社長と中村圭介氏を筆頭とするプラスワンツール(千葉県流山市)だ。

 同社のアプローチの特徴は、「高価な専用工具に依存せずに、身近なものの活用」を提案している点にある。特別な道具がなくても鈑金は可能であることを示し、初心者が足を踏み入れるハードルを下げている。たとえば、ホームセンターや100円ショップなどで手に入るアクリル板にペーパーを貼り付けることで手研ぎファイルの代わりにする。ハンマーはヘッドの部分だけでなく、修正する面積や叩く強さによって、持ち手側も活用する。鉄板をバーナーであぶることで生じる熱膨張を利用し、裏から板で押す「オフドリー」と同様の効果を得るといった発想だ。

 その他にも、現場ですぐに活かせる実践的なコツは多いという。根底にあるのは「工具や作業順序への固定概念を捨て、その時々の状況に合った手法で直す」という考えだ。作業開始前にペーパーで損傷部位を削り、マーカーで傷を可視化する方法や、ペーパーを当てる際は一方向だけでなくクロスさせて研ぐといった基本の徹底。また、溶接の回数を極力減らすために事前の粗出しで、できる限り凹みを小さくしておくことも重要だ。さらに、エアゾール缶プライマーの不要な飛び散りを防ぐために、ティッシュに吹き付けてから必要な個所だけを拭くなど、ちょっとした知恵や工夫は随所で使用できる。


傷の可視化。見るだけでなく、実際に触って確かめることも重要
傷の可視化。見るだけでなく、実際に触って確かめることも重要



絞りながらハンマーで叩くことで延びを解消できる
絞りながらハンマーで叩くことで延びを解消できる




若手を育て、利益をきちんと得られる工場に 


 このような柔軟な思考や道具の活用は単に鈑金を始めるハードルを下げることだけにとどまらない。あぶりによるオフドリーの代用や、硬化時間の速いUVパテの使用で時間短縮することにより、別作業に時間を費やすことができる。つまり純利益の創出につながるのだ。

 また、同社が開発する製品にも若手技術者育成への思いが色濃く反映されている。たとえば、引き出しと絞りが両立できるプーラーは、「お金をまだあまり持っていない若者でも少し頑張れば買えるように」と価格が抑えられている。これは若手技術者に対する彼らなりのエールなのだろう。「作業工数や手間を掛けたきれいな鈑金ができるか、できないかではない。まずは『できる』ようになっておき、現場の状況に応じてその工程をやるかやらないかを取捨選択できるようにする必要がある」と中村氏は語る。

 現在、中村氏は受講者のレベルに合わせ、外板鈑金の基礎やハンダ引き、スタッドや絞り、ハンマリングなどの鈑金講習会を実施している。門戸を広げ、確かな技術と柔軟な手法で利益を生み出す手立てを伝える。彼らの取り組みからは、次世代の職人を育て、業界の未来を切り拓こうという強い意志が感じられる。

UVパテを硬化させる際には照射機と塗布面の距離を近づけるのがコツ
UVパテを硬化させる際には照射機と塗布面の距離を近づけるのがコツ