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【現場技術】ミリ波レーダー搭載バンパーの鈑金塗装術、塗膜管理によるセンサー異常回避の考え方

ミリ波レーダー搭載バンパーにおける鈑金及び塗装の課題を整理し、塗膜管理によってセンサー異常を防ぐための具体的なアプローチについて解説

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2026/06/29

【現場技術】ミリ波レーダー搭載バンパーの鈑金塗装術、塗膜管理によるセンサー異常回避の考え方

 先進運転支援システム(ADAS)の普及により、車のバンパーは単なる外装部品から高精度なセンサーを保護するレドーム(ポケモンやガンダムでもこの名称はでてくる、アンテナカバー)へとその役割を変えた。衝突被害軽減ブレーキなどの安全機能を正確に作動させるためには、バンパー内部に搭載されたミリ波レーダーの電波が障害なく透過・反射する必要がある。



ADAS普及に伴うバンパー修理の現状と課題

 現在、国土交通省の基準改正により、2021年11月以降に発売された国産の新型車に対して乗用車等の衝突被害軽減ブレーキの装着が義務付けられている。さらに2025年12月からは既存モデルの継続生産車にもこの義務化が適用拡大されており、現在販売される新車にはメーカーの任意ではなく、法的な必須要件として同ブレーキを搭載している。これに伴い、2024年10月からは特定の電子制御装置を対象としたOBD検査(車検)が開始。これにより電子デバイスの正常な機能維持が法的に義務付けられた。

 鈑金塗装の現場においても、この変化がもたらす影響は大きい。従来、バンパーのすり傷やへこみは、パテ成形や複数回の重ね塗り、あるいはボカシ塗装によって視覚的な美観を取り戻すことが優先されてきた。しかしミリ波レーダー搭載車において、エンブレム周辺やバンパーコーナー部などのレーダー照射範囲にこの考え方を適用することは、電波の透過損失(あるいは減衰)や乱反射を引き起こし、システムの誤作動や機能停止といったセンサー異常の直接的な原因となりうる。



ミリ波レーダー周辺における塗膜管理の重要性とメカニズム

 ミリ波レーダー(主に76〜79GHz帯)の電波は、樹脂製バンパーを透過して前方の障害物を検知する。この際、透過経路上にある塗膜の厚さや材質が、電波の透過率に影響を与える。


塗料成分が与える影響

 問題となるのが、メタリックベースやパールベースに含まれるアルミフレークやマイカ(雲母)などの光輝材。これらは金属由来あるいは誘電率の高い物質であり、電波を反射・吸収する性質を持つ。したがって、指定された膜厚を超えて塗装が行われるとレーダー波がバンパーを通過できず、メーターパネル上にセンサー異常の警告が点灯することになる。



現場で求められる厳密な膜厚管理

 各カーメーカーはボデー修理書において、レーダー照射エリア周辺の補修塗装に対して厳しい制限を設けている。「パテ埋め禁止」、「プラサフ(下塗り)の塗布禁止」、「指定膜厚(例:ベースとクリヤーを含め150ミクロン以内など)の厳守」、あるいは「当該エリアの塗装修理自体の禁止(バンパー交換の指示)」などである。

 現場の塗装技術者は、プラスチック用の超音波式膜厚計などを用いて塗装前後の膜厚をミクロン単位で測定し管理することが不可欠となっている。感覚的なスプレーガン運びに依存していた従来の塗装技術から、数値に基づいた手法への移行が必要となっている。



現場技術者が直面している「見えない」ハードル

 こうしたメーカーの要件に対し、取材で話を聞くと現場の技術者は大きな課題を抱えているという。
 たとえば、バンパー角に小さな擦り傷がある場合、実費修理では費用を抑えるために部分的なボカシ塗装を行いたいという要望が強い。しかし、ボカシの際がレーダーの照射範囲に重なると、塗膜の段差によって電波が屈折しセンサーの指向性が狂うリスクが生じる。また、調色の難易度も課題であり、加えて隠蔽性の低い塗料(赤や黄、特殊な3コートパールなど)の場合、下地を隠すために塗り回数が増え、結果として規定の膜厚をオーバーしやすい。安全を担保しつつ顧客が納得する美観を、指定された極薄の塗膜制限内で実現する作業はかなりの負担となる。


【補足】過去の教訓:超音波センサー導入時の混乱

 1990年代後半から2000年代にかけて、クリアランスソナー(超音波センサー)が高級車を中心に普及し始めた時期のことである。
 当時、センサー本体を周囲の外板と同色にし後付け感のある樹脂製センサーを目立たなくしようと、現場の判断でセンサー表面に厚塗りを行ったり、パテの粉がセンサーの隙間に入り込んだ結果、「障害物がないのに警告音が鳴りやまない」というセンサー異常が多発していた。超音波は音の波であり、塗膜の厚みや硬さが振動板の動きを阻害したことが原因だった。この失敗から「センサー本体には塗装をしない、または専用の極薄塗装済み部品を使用する」に対応は変わっていった。しかし、今回のミリ波レーダーの場合、センサー本体はバンパーの裏側に隠れており、バンパー表面全体が電波の透過窓となっている。部品単体をいじらないという視覚的な対処だけでは通用しにくく、目に見えない電波の特性を理解した上での高度な塗膜管理が必要となっている点で、技術水準は過去より増している。



設備投資と工賃改定の課題

 安全な鈑金塗装での修理を提供するためには、樹脂対応の超音波膜厚計、特定整備に対応したスキャンツール、そして修理後のエイミング作業を行うためのターゲットボードや水平な作業スペースなど多額の設備投資が必要となる。
 バンパー補修における修理工賃が、こうした技術要件や設備投資に見合った水準で設定されているかについては、議論の余地がある。厳格な塗膜管理やエイミングに要する追加の作業時間は、従来の「バンパー1本塗り」の標準作業時間には収まりきらない。部品交換(バンパーのアッセンブリー交換)を選択すれば確実な安全性は担保されるが、修理工賃の利益は圧縮され、顧客の負担や保険会社の支払い金額は上がる。



次世代の鈑金塗装に求められること

 ミリ波レーダー搭載バンパーの修理は、外装の復元ではなく電子機器の機能保証の一部になっている。センサー異常を防ぐための塗膜管理は、電波特性と塗料の物理的性質を理解した上での作業である。鈑金塗装技術者は職人としての高い技術を維持しながらも、計測数値を論理的に解釈するエンジニアとしての視座を持つ必要がある。

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