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改正資源有効利用促進法施行による車体整備事業者への影響

~今後、損傷した樹脂バンパーやパネルを新品交換しても古いパーツを廃棄しにくくなる??~

  • #ニュース

2026/05/12

 2026年4月1日、「改正資源有効利用促進法」及び「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律(再資源化事業等高度化法)」が全面的に施行された。この改正により、従来“守りの廃棄物削減取り組み”であった3R:Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)は、再生資源の積極的な活用である“攻めのサーキュラーエコノミー”へ舵を切った。
 鈑金塗装工場の経営者や現場の技術者の中には、こうした法改正を「カーメーカーや素材メーカーといった大企業の話であり、我々の日常業務には直接関係ない」と捉えている方もいるかもしれないが、今後はそう言っていられないかもしれない。

 日々現場で向き合っている樹脂バンパーやパネルの材質、ガンで吹き付ける塗料の性質、そして工場の片隅に積み上げられている交換済みの廃部品など、今回の法改正の影響が浸透すると、これら鈑金塗装現場にかかわる製品の素材、補修アプローチ、廃棄ルートは変更されうる。
 改正では、カーメーカーに対しては再生プラスチックの利用義務化や解体・分別しやすい環境配慮設計が強く推進された。これは、今後工場に入庫する車両の構造や部品の材質そのものが、リサイクルを前提としたものへと大きく変わっていくことを意味する。また、塗料メーカーに対しても、リサイクル工程で樹脂から容易に剥がれる易剥離性塗料などの新たな技術開発を促している。

 こうしたサプライチェーン全体でのサーキュラーエコノミー化の波は、最終的に車の“使用と廃棄”の最前線に立つ車体整備事業者を直撃する。利益効率や作業の早さを優先し、「少しでも損傷があれば新品部品にAssy交換し、古い部品は産廃として捨てる」という従来の作業は、環境負荷が高く資源循環を阻害する手法として見なされうる。
 樹脂溶接や鈑金技術を駆使した「直して長く使う(リペア&リユース)」への貢献、そして補修では避けられない交換済み部品を、単なるゴミではなく価値ある資源として正しく分別すること。これが、自動車整備事業者へ現政府が求めている、適正な再資源化ルートへ確実に引き渡す“動静脈連携(製品の製造・販売から廃棄物の回収・リサイクルが連携し資源循環を促進させること)のハブ”としての役割なのだろう。
 特に、車という数万点以上の部品からなる複雑な製品のライフサイクルにおいて、カーメーカー、塗料メーカー、車体整備事業者は、“設計・素材選定”、“表面保護・機能付与”、“使用期間中の維持・補修・適切な廃棄・再流通”という各資源循環の要所を担っている。サプライチェーン全体での動静脈連携を実現させることで、“他国に依存しない資源の自律性”を達成する。ここが本改正の肝となっている。
 本稿では、各メーカー、現場に求められる具体的な動きを解説する。 

カーメーカーに求められる対応
~再生材利用の数値目標とエコ設計の義務化~

 車は今回の改正で、「指定脱炭素化再生資源利用促進製品」に指定され、再生材の利用促進が強く義務付けられた。

再生プラスチック利用の計画提出と詳細な報告義務

 努力目標ではなく、再生プラスチックの利用量や利用率の目標を設定し、毎年度計画を提出することが2027年度から義務化された。さらに、2028年度から始まる定期報告では「国産再生プラスチック」の利用量も報告項目に含まれる。
 フロントバンパーやダッシュボードなどの大型樹脂部品では、バージン材(新規材)から再生プラスチックへの段階的な切り替えを求められる。たとえば、「10年後までに特定車種のバンパーの再生材比率を向上させる」といった定量的なロードマップを策定しなければならないというものである。経済産業省から公表された事務資料の報告フォーマットでは「前年度に比べ改善できなかった場合その理由」を記載する項目もあり、国による厳しい進捗管理が予想される。

環境配慮設計の認定制度とメタルリサイクル戦略

 解体や分別が容易な製品を認定する「環境配慮設計の認定制度」を創設しており、将来的な解体を前提とし、パネルを固定するネジの種類や数量を大幅に削減する設計や、リチウム蓄電池などとその他の部品を容易に分解、分別できる設計が評価される制度となっている。
 また、鉄やアルミ、銅などの主要なベースメタル、レアメタルの再資源化を推進する「メタルリサイクル推進戦略」に基づき、2030年までに「アルミ展伸材(板・棒製品)の国内生産量の約4割を目安に再生アルミ原料由来にする」、「国内供給される永久磁石原材料の約3割をリサイクルで賄う」などの数値目標が設定されている。

塗料メーカーへの影響
~リサイクルを加速させる塗料技術の開発~

樹脂のリサイクルを阻害しない易剥離性と相溶性

 車から回収した中古(使用済み)樹脂部品を再生する際、障壁となるのが硬い塗膜が樹脂を覆っているケース。リサイクル工場での処理工程で特定の処理を施した際にのみ、塗膜がペロッと剥がれる“易剥離性”を持った塗料の開発が急がれている。これは、国の掲げる「使用済物品等から再生プラスチックを取り出す技術」の向上に関係し、塗膜を剥離せずに樹脂と一緒に溶融しても再生プラスチックの物性を低下させない“相溶性”を兼ねたコーティングも求められている。
 加えて、環境配慮設計の指針では「カーボンフットプリントの算定及び公表」や「製品中の懸念物質の最小限化及び公表」が定められており、従来より低温で焼き付け可能な次世代塗料や、製造過程での環境負荷物質を低減した塗料などがこれに該当し、カーメーカーの脱炭素目標達成を直接的に支援するための協力体制が望まれている。

車体整備事業者(鈑金塗装)への影響~現場での資源循環と適正処理~

 車体整備事業者は、自動車の使用と廃棄の中継地点に位置付けられ、修理やメンテナンスといった作業を通じた資源の有効利用が望まれている。

安易な部品交換から修復へのシフトチェンジ

 現場では亀裂の入った樹脂バンパーは新品部品への交換が多く、近年こういったバンパーに適した溶接機が上市され普及しつつある状況である。しかし今後は、廃棄物を減らすため、耐久性を前提とした修理方法を活用することが国策として推進されるだろう。樹脂溶接技術を用いたバンパー補修など、「捨てずに直す」ことが推奨される。
 とはいえASVでは、バンパーの裏にあるミリ波レーダーの電波照射範囲などにかかわる修理作業はボデー修理書で明確に指示が記載されている。樹脂や塗膜の厚み、顔料の含有量が変化することで電波の透過率(誘電率)が変化し、衝突被害軽減ブレーキなどの誤作動や不作動の原因となりうるためだが、果たしてこういった個所の修理についても見直しがはいるのかは動向を見守りたい。

「不適正スクラップヤード規制」を受けた現場での資源選別

 廃棄物処理法等の改正案に盛り込まれた「不適正スクラップヤード規制」により、使用済みの金属やプラスチック物品を保管、再生する事業者への監視が厳格化し、許可制が導入される。工場では、交換した廃バンパーを産廃のコンテナに投げ込むのではなく、素材ごとに仕分け、国が推進する適正な「再生プラスチック集約拠点」や認定業者へと確実に引き渡すフローが必要となる。

 また現在、リチウムイオン電池はEVだけでなく身の回りの製品に不可欠な存在となっているが、その普及に伴い“火災リスクの増加”と“重要鉱物の海外依存”という2つの課題に対しても方針が示されていた。

【参考】リチウムイオン電池に関する事項

火災事故の頻発と廃棄時のリスク
課題と現状

 リチウムイオン電池はエネルギー効率が高い一方で、強い衝撃や高温環境に弱く、それらが原因で発火に至る火災事故が頻発している。特に使用済み製品の廃棄時におけるトラブルなど、ごみ収集や廃棄物処理時における発煙や発火事故が増加傾向にある。
 EVのバッテリーなどに使用されるリチウムイオン電池には、リチウムやコバルト、ニッケルといった重要鉱物資源が含まれる。しかし、これらの資源の輸入は特定の国に大きく依存しているのが現状。経済安全保障や産業競争力強化の点から回収と再資源化が重要ではあるが、国内では十分に回収されておらず、再資源化も進んでいない。

EV・リチウムイオン電池に関する法規制と国際動向

 欧州(EU)では、2023年8月にEUに新たな「欧州電池規則(Regulation (EU) 2023/1542)」が発効され、バッテリー規則の制定や廃バッテリー回収が義務化されている。さらに2031年以降は、バッテリー製造時の再生材利用も義務化されるなど国際的なルール形成が急速に進んでいる。
 日本国内においても、製品の設計段階からリサイクルを考慮する「環境配慮設計の認定制度」が推進されており、安全性確保の観点から、製品(EVを含む)に搭載されるリチウム蓄電池などとその他の部品を容易に分解又は分別できる設計の検討が求められている。

「リチウムイオン電池総合対策パッケージ」の国内展開

 2030年までにリチウムイオン電池起因の重大火災事故をゼロにし、国内に十分なリサイクル体制を構築するため、関係省庁が連携して「リチウムイオン電池総合対策パッケージ」を以下のように取りまとめている。

・製造・輸入・販売時の対策:電気用品安全法による安全規格(PSEマークなど)の徹底や、NITE(製品評価技術基盤機構)による発火原因究明の体制強化。

・廃棄時の対策:膨張・変形したリチウムイオン電池の適正処理方針の策定や、地方公共団体における利便性の高い分別回収体制の実証・構築支援。

・処理、再利用の対策: 廃棄物処理施設に対する高度選別機(AI活用など)や検知設備の導入支援が行われる。同時に、リチウム等重要鉱物の回収・精製に向けた実証支援など、再資源化拠点への投資が強化される。

・国民への啓発(3つのC):購入時の「賢く選ぶ(Cool choice)」、使用時の「丁寧に使う(Careful use)」、廃棄時の「正しく捨てる(Correct disposal)」という3つのポイントについて、政府全体での呼びかけを強化。

 このたびの法改正とそれに伴う循環経済行動計画は、単なる規制強化という枠に留まらないだろう。すでに地方自治台や大手ケミカルメーカー数社はこの計画をうけた商業稼働を開始したというリリースも散見される。
 レーダー波の透過が必須な個所を一体型のデザインではなく、独立した小さな部品の集合体として設計することでセンサー部は安全のために交換しつつ、バンパー本体は樹脂溶接で補修するといった変化が今後あるのだろうか。