JOURNAL 

黄色のセンターライン「半数を白線に塗り直す」警視庁の異例対応 自転車追い抜き新ルールが生んだ別の交通違反発生の矛盾

  • #一般向け

2026/09/11

 今年4月に施行された改正道路交通法は、自動車が自転車を追い抜く際の新たなルールを定めた。しかし、このルールを遵守しようとするあまり、はみ出しが禁止されている黄色のセンターラインを越えてしまうという、別の交通違反が多発していることが調査報道で明らかになった。この事態を受け、警視庁は東京都内にある黄色のセンターラインのおよそ半数を、はみ出しが可能な「白線」に塗り直すという異例の方針を固めた。


自転車追い抜き「新ルール」で相次ぐ交通違反 警視庁が都内の黄色センターラインを「白線」に塗り直しへ【スポットライト】
https://www.fnn.jp/articles/-/1111524


「新ルール」で相次ぐ交通違反


 今年4月の道路交通法改正により、自動車は自転車を追い抜く際、少なくとも1メートルの安全な間隔を確保することが求められるようになった。このルールは自転車利用者の安全確保を目的としたものだが、特に道幅の狭い道路において、意図せぬジレンマを生んでいる。


 多くのドライバーが自転車との1メートル間隔を保とうとした結果、車線をはみ出し、黄色のセンターラインを越えてしまうケースが相次いで確認された。黄色のセンターラインは、対向車線へのはみ出しを禁止する規制であり、これを越える行為は交通違反となる。さらに、道路脇に駐車車両がある場合、それを避けて走る自転車を追い越すには、さらに大きくセンターラインをはみ出さざるを得ない実態も浮き彫りになった。


 良かれと思って取った安全確保の行動が、結果的に別の違反行為につながってしまう。この矛盾した状況を受け、警視庁は都内のおよそ1700キロにわたる黄色のセンターライン区間について、大規模な調査に乗り出している。例えば、都内で最も多い83カ所の該当区間を抱える福生警察署では、8月に警察官自らが自転車に乗り、管内の黄色センターライン区間を一つひとつ訪れて現場の状況を確認した。


実態に即した交通規制になっているか確認を実施している


 一連の調査を受け、警視庁は都内にある黄色のセンターライン区間のうち、少なくとも約半数をはみ出し可能な「白線」に塗り直す方針を固めた。この対応について、警視庁交通規制課の時任瑞穂管理官は次のように説明する。


 「(黄色のセンターラインでは)車両は自転車を追い越す場合であっても、道路の右側部分へはみだして通行することが禁止されている。現在、実態に即した交通規制になっているか確認を実施しているところで、交通規制が実施されているおよそ1700キロ中の半数程度は見直す見込みで、複数年で対応していきたいと考えている」


 さらに、中野区内では全ての黄色のセンターラインを白線に塗り直す方針であることも新たに判明しており、地域の実情に応じてより踏み込んだ対応が取られる可能性が示唆されている。


 一方、全国の警察を監督する警察庁は、「(はみ出し禁止をめぐり)一部で声が上がっていることは把握しているが、具体的な件数については把握していない。問題が生じる場合は必要に応じて規制の解除(塗り直し)も検討するよう指示している」としており、全国的な課題として認識しつつも、具体的な対応は各地域の判断に委ねられているのが現状である。


理由があって黄色のセンターラインが引かれていたはず


 今回の警視庁の方針に対し、インターネット上では様々な意見が交わされている。「本末転倒ではないか」といった声や、自転車側の危険運転を指摘する意見も上がる中、より根本的な解決策を求める声も少なくない。


 あるユーザーは、「理由があって黄色のセンターラインが引かれていたはずじゃないのだろうか」と指摘する。自転車を追い越す際の問題に対応するために既存の規制を緩和すれば、本来その規制が防ごうとしていた危険性が再び高まるのではないか、という懸念だ。安全性やインフラ整備を総合的に考慮せずにルール変更が進んでいるとの見方もある。


 また、物理的な道路の塗り替えには多大なコストと時間がかかることから、法律そのものの見直しを提案する意見も多い。「『ただし自転車を追い越す際、1mの側方間隔が確保できない場合を除く』と追記すれば、ペイントの塗り替え作業もコストも不要で、全国で即日適用できる」という具体的な代替案も示されている。実際に、神奈川県警のパトカーが黄色線をはみ出して自転車を追い越していたという目撃談もあり、現場レベルでは柔軟な運用が求められている実態も垣間見える。


 さらに、この問題の背景には、近年の普通自動車の大型化があるという指摘も見られる。かつて1.6メートル程度だった平均的な車幅が、現在では1.8メートルに達することも珍しくない。輸出市場を意識したメーカーの事情が、道路幅に余裕のない日本の都市部において、新たな交通問題の一因となっているという分析だ。


 警視庁は、自転車が車道を安心して走れる環境を整備するため、青色の自転車専用通行帯の設置や、車道上に矢印を描く「ナビマーク」の表示を進めるとしている。しかし、今回の問題は、単なる規制の見直しに留まらない、より複合的な課題を社会に突きつけている。新たな交通ルールと既存のインフラ、そして変化する車両サイズとの間で生じた歪みをいかに解消していくか。対症療法的な対応だけでなく、法律の運用やインフラ整備を含めた統合的な視点からの議論が、今まさに求められている。