JOURNAL 最新ニュース
内閣府と自動車工業会の統計データが示す「長く乗る時代」のカーオーナーと自動車整備市場の現在
2026/10/08
今は車を買い替える時期ではないのか
消費者態度指数から見る2026年秋の購買心理
10月5日、内閣府が公表した「消費動向調査(令和8年9月実施分)」は、現在のカーオーナーの購買心理が映し出されているであろう数値を示していた。
消費者態度指数(季節調整値)は35.4で5ヵ月ぶりに低下。4つの構成指標のうち「暮らし向き」(前月比▲0.3ポイント)、「耐久消費財の買い時判断」(同▲0.2ポイント)が下押しに働いた一方で、「収入の増え方」と「雇用環境」はそれぞれ0.1ポイント改善した。ただし内閣府は消費者マインドの基調判断を「持ち直しの動きがみられる」として据え置いており、3ヵ月の移動平均は前月比0.6ポイント上昇している。単月の指数低下は見られたものの、基調としては緩やかな回復傾向が続いているという公式評価だった。
耐久消費財の筆頭ともなる自動車。「今は買い時ではない」という消費者の判断が統計から読み取れる背景には、車検代、自動車保険料、修理費、燃料代などの維持費全般の上昇がある。日本自動車工業会(以下、JAMA)の「2025年度乗用車市場動向調査」(2026年4月14日公表)によれば、車保有に関わる費用に「負担が大きい」と感じる世帯は全体の4割弱に達し、「車検代」に至っては7割を超える割合が負担感を訴えている。
この2つの統計が交差する場所に、2026年の自動車整備・鈑金塗装市場の現状があるだろう。
乗用車普及率76.2%
前年比2.0ポイント低下が意味すること
内閣府「消費動向調査 令和8年3月実施分」に掲載された耐久消費財普及率データによると、乗用車の普及率は76.2%で前年から2.0ポイント低下。なお、JAMA「2025年度乗用車市場動向調査」では乗用車世帯保有率として71.9%という数値を示しており、内閣府の76.2%と差がある。これは両調査の定義・集計方法・対象世帯・調査実施時期の違いによるものであり、いずれも公式な調査として有効な数値。
この数値をどう読むか。新車価格の高騰、維持費の上昇、物価全体の高止まりという三重の圧力を受け、「新しい車に乗り換えるのを先送りする世帯が増えている」のだろうか。
JAMA調査では前保有車の平均保有期間は7.2年。うち10年超の長期保有が3割弱を占め、長期化傾向が続いている。新車、中古車ともに平均保有期間はほぼ同水準(新車7.3年、中古車7.1年)であり、「とにかく今の車を長く使う」という消費行動が定着しつつある。
この傾向が整備・鈑金塗装市場に与える影響は、単純な需要増加というより質的な変化として現れるだろう。10年超の車両は消耗部品の交換頻度が高まり、塗装の劣化や錆、ゴム類の硬化など外装の補修需要も増加する。「修理してでも乗り続ける」もしくは「乗り続けざるを得ない」カーオーナーが鈑金塗装、整備工場の扉を叩く機会は、この統計結果が続く限り増え続ける。
消費者態度指数33.3への急落
2026年3月に何が起きたか
2026年春、消費者心理は急激に悪化した。3月の消費者態度指数は33.3と前月比6.4ポイントの大幅低下を記録。「耐久消費財の買い時判断」は26.0と7.7ポイント急落した(内閣府「消費動向調査 令和8年3月実施分」)。
その影響は「1年後の物価見通し」にも鮮明に表れた。2026年3月調査では「物価が上昇する」と答えた割合が93.1%に達し、同調査期間中の最高水準となった。その中で「5%以上物価が上昇する」と答えた消費者は53.4%と前月比16.9ポイントの急増。「物価はさらに上がる」、「耐久消費財は今買うべきではない」という二重の心理ブレーキが同時にかかっていたのだろう。
その後、3〜9月にかけて指数は34〜35台まで回復。9月時点では物価が「上昇する」と答えた消費者は90.6%(前月比1.6ポイント拡大)、「5%以上上昇する」が47.6%で最多回答となっている(内閣府「消費動向調査 令和8年9月実施分」)。3月のピーク(93.1%)からは低下したものの、物価上昇への警戒感は消費者の中で根強く続いている。
維持費の内訳
カーオーナーが「重い」と感じている費用はどれか
JAMAの実施した「2025年度乗用車市場動向調査」では、車保有にかかる各費用への負担感を細かく調査しており、結果は以下の通り。
費用項目 | 「負担が大きい」と感じる割合 |
|---|---|
車検代 | 7割台半ば |
任意保険料 | 7割強 |
自動車税 | 6割以上 |
自動車重量税 | 6割以上 |
燃料代 | 6割以上 |
自賠責保険料 | 6割以上 |
月平均維持費(全体) | 9,500円 |
月平均維持費(家族成長期) | 約11,000円 |
(出典:JAMA「2025年度乗用車市場動向調査」、2026年4月14日公表)
「車検代が高い」という消費者の感覚は、工賃単価や部品代の上昇を直接反映した結果であろう。整備工場にとって“7割台半ばが車検代を負担と感じている”という数値は、次の車検の見積りをどう説明するかという現場の課題として跳ね返ってくる。さらに、4輪自動車保有世帯の4割台半ばが「物価高が車の使用・購入・保有に影響している」と回答。購入しなかった人の2割台半ばが物価上昇を理由として挙げている。
維持費が高い→新車への買い替えを先送る→今の車をより長く使う、という消費者行動の連鎖がカーオーナーの需要を変えつつある。
買い替え行動から
どのような入庫車が増えうるかを予想
同タイプ・同クラスへの買い替えが主流
直近購入者では、買い替えが8割弱を占め、そのうち同サイズを考えているのが約7割。大幅なサイズダウンや車種変更は少数派だ。現在の主力入庫車種が今後も継続して整備工場に来ることを意味しており、急激な車種構成の変化を心配する必要性は当面少ないだろう(JAMA「2025年度乗用車市場動向調査」)。
平均購入価格331万円・「300万円超」が4割強
新車の平均購入価格は331万円で、「300万円超」が4割強を占める(同調査)。高単価車両の普及は修理費、鈑金費用の上昇要因でもある。同じ事故でも、車両価格が高いほど修理費の絶対額は増える傾向があり、鈑金塗装工場にとっては一件当たりの修理単価上昇という形で影響が現れうる。
買い替えのきっかけは「経年変化・老朽化」が上位
買い替え機会の上位は、「経年変化」、「老朽化による状態変化」。「5年以内に買い替え予定」は2割台半ばに留まり、多くのカーオーナーが「壊れるまで乗り続ける」消費行動を取っている(同調査)。「故障してから初めて整備工場に来る」カーオーナーも少なくないのだろう。
整備・鈑金塗装の現場では「もっと早く来てくれれば」という場面に遭遇することはある。ブレーキパッドが限界を超えても、タイヤが偏摩耗しても、「まだ走れるから」と来院が遅れる。保有期間の長期化はこのリスクをさらに高める方向に働く。
電動車・ADASの普及
整備現場への技術的な影響
電動車の購入意向は46%
HEVが圧倒的、BEVは2割強
次回購入での電動車(HEV、PHEV、BEV、FCEVの合計)意向は46%。ただし購入検討の第1位はHEVが最多で、BEVを1位とした割合は2割強ほど。BEVへの懸念として挙げられる上位は、「充電インフラの整備状況」、「一充電あたりの走行距離」、「車両価格の高さ」だった(JAMA「2025年度乗用車市場動向調査」)。工場の観点では、HEVの普及継続が意味するのは「高電圧系の知識は必要だが、ガソリン車と同一ラインでの入庫対応が当面続く」ということだ。
なお、自宅への充電器設置は1割未満。設置しない理由の上位は「設置費用」、「設置スペース」。消費者の充電器設置希望場所は「ガソリンスタンド」、「コンビニ」、「大型商業施設」が上位だが、「整備工場での充電対応」という付加価値の余地はここに存在する(同調査)。
ADAS装着意向
60歳以上の約7割以上が運転に不安を
衝突被害軽減ブレーキ・歩行者検知保護システム・誤発進防止システムへの装着意向が高く、60歳以上の約7割以上が運転に何らかの不安を感じている。先進安全技術の許容価格(車両購入時の追加費用として)で、「10万円超」を許容するのは3割台半ばほど(同調査)。
非保有化・若年層の車離れ
市場縮小のシグナルは出ているか
4輪自動車の非保有世帯は全体の2割台半ば。首都圏では4割強、地方圏では2割と地域差が大きい。非保有理由の上位は「維持費負担」であり、保険料、車検代、燃料代などの上昇が非保有化を加速させていることが読み取れる(JAMA「2025年度乗用車市場動向調査」)。
現在非保有の世帯の7割台半ばは今後も購入意向なし。「すべての制約がなくなっても」保有意向なしが7割弱という数値は、経済的な負担だけでなく生活スタイルとして車を必要としない層が構造的に増加していることを示している(同調査)。
若年層非保有者の車への関心度は前回(2023年度)調査より低下している。自分専用車の購入意向は前回並みの3割強に留まり、「公共交通機関で十分」が5割程度を占める(同調査)。
この傾向は中長期的なカーアフターマーケット市場の縮小圧力としても機能する。ただし、「保有する人が減っても、保有している人がより長く使う」という構造が同時に進行しているため、入庫台数の急減ではなく入庫車両の高齢化という形で、現場への影響がより加速すると思われる。
内閣府とJAMAの統計を併せて見ると、
①自動車保有期間の長期化
②車両維持費のカーオーナーへの負担感の高まり
③新車購入の手控え
④電動車・ADASの普及
⑤非保有化・若年層の車離れ
ということが、統計的な数値としても読み取れた。これらの数値が示すメッセージは分かりやすく、「新車は買わない、今の車を長く乗る、ただし維持費負担は重い」という消費者行動・心理が定着しつつあるということ。
この環境下で工場が取りうる方向性は大きく2つあるだろう。1つは、「長く乗り続けるための定期的なパートナー」として信頼関係を深めること。もう1つは「電動車・ADAS対応という技術的な対応力」を明示することで、新たな需要に応えられる工場として選ばれること。
統計データは市場全体の方向性を示すが、それを現場の判断にどう結びつけるかは、数字の外にある。次の入庫車の見積りをどのように説明するか、その点に工場と顧客の信頼関係の核があると感じる。
参考(リンクは掲載Webページ):
・内閣府「消費動向調査 令和8年9月実施分」(2026年10月5日公表)
・内閣府「消費動向調査 令和8年3月実施分」(耐久消費財普及率データ)
・日本自動車工業会「2025年度乗用車市場動向調査」(2026年4月14日公表)
あなたにおすすめの記事
-
【タイムズカー流出事件】運転免許証の画像流出はどのような被害につながるのか、免許証の再発行は効果はあるのか
2026/10/08
-
EV3台を比べたら、補助金で価格表がバグった
2026/10/08
-
内閣府と自動車工業会の統計データが示す「長く乗る時代」のカーオーナーと自動車整備市場の現在
2026/10/08
-
トヨタ自動車、刀剣男士10振りと10車種のそれぞれの個性が重なった特別な車両デザインを公開!
2026/10/08
-
限界はウサイン・ボルト以上の速度!? ETCバーは何キロまで通過できるのか
2026/10/08
-
【車業界版・今日は何の日】10月8日は「木の日」!現場で使える顧客トークネタ
2026/10/08