JOURNAL 

【人とくるまのテクノロジー展2025横浜】ホンダN-VAN e:のホワイトボディ:バッテリーパックを構造材として活用しボディ単体の重量増を4.8kgに抑制

ICVとの共用化を最大限推進しコスト=価格上昇を抑えつつ同等の室内空間と衝突安全性能を確保

  • #イベント

2025/05/30

 2025年5月21~23日にパシフィコ横浜で開催された自動車技術の展示会「人とくるまのテクノロジー展2025 YOKOHAMA」(主催:自動車技術会)では、自動車技術会構造形成技術部門委員会による「ホワイトボディ展示」が今回も実施された。


 その中でホンダは、2018年7月に発売したFF軽商用バン「N-VAN」をベースにBEV(電気自動車)化し、2024年10月に発売した、「N-VAN e:」(エヌバンイー)のホワイトボディを展示した。

ホンダN-VAN e:のホワイトボディ・フロントまわりとバッテリーパック

 N-VANは、助手席側センターピラーレスボディによる1580mmの開口幅と、センタータンクレイアウトや運転席以外のシートを格納優先で設計したことなどにより、荷室床面地上高525mmと荷室高1260~1365mmを実現した低床フラットフロア、軽自動車最大となる2635mm最大スペース長、などが大きな特徴。

ホンダN-VAN e:のホワイトボディ・助手席側ドア開口部

センターピラーレスとなる助手席側のテーラーウェルドサイドパネルアウター

1500MPaホットスタンプ材を内蔵しドアフックを3箇所に設けた助手席側前後ドア

「N-VAN e:」では、「N-VAN」本来のこれら特徴を維持しながら、コスト=価格と重量の増加を防ぐべく、ボディ骨格をICV(純ガソリン車)とBEVとで可能な限り共用。また駆動用バッテリーパックに、センタータンクレイアウトを有効活用した形状を与えることで、ICVと同等の室内空間を確保した。

BEV化によるボディ変更部位およびICVとBEVとのパワートレインレイアウト比較図

 バッテリーパックではさらに、車体外側でサイドシルと締結するバッテリーブラケットを衝撃吸収部材として活用。加えてバッテリーパックのフレームを構造材の一部とし側面衝突時のロードパスとすることで、規制が強化されたポールとの側面衝突時を含め、バッテリーおよび乗員の保護性能を高めている。

バッテリーパックの構造図およびロードパスのイメージ図

 そのほかフロントのモータールームでは、電動コンプレッサーとBOS(ブレーキオペレーティングシミュレーター)が前面衝突時に干渉しBOSが後退、乗員へ被害が及ぶのを防ぐため、両者間にスライダーブラケットを配置。

前面衝突時のスライダーブラケットによる電動コンプレッサーとBOSの干渉回避イメージ図

 フロントサブフレームも、前面衝突時にクロスメンバーとの締結点が分離し離脱。クラッシュストロークをより多く確保し車体Gを減少させつつ、電動アクスルが脱落することで車内の乗員への被害低減を抑えている。

前面衝突時のサブフレーム離脱イメージ図

 これらの結果、ICVに対しBEVの重量増加は、車両全体では180kgに達するものの、ボディ単体ではわずか4.8kgに抑えることに成功した。

ICVに対するBEVの重量増加イメージグラフ

 会期2日目の2025年5月22日に開催されたフォーラム「車体の最新技術2025」には、本田技研工業四輪開発本部完成車開発統括部車両開発一部ボディ開発課の柿岡良市氏、同・衝突安全開発課の宮本達也氏、四輪生産本部生産技術統括部新機種生産技術部車体生産技術課の高根沢彰兵氏が登壇。

本田技研工業の柿岡良市氏によるプレゼンテーションの様子

 N-VANシリーズ共通のボディ関連技術やボディ剛性左右差の改善策、N-VAN e:における交換バンパー由来リサイクル材を適用したフロントグリル/チャージリッドおよび無塗装前後バンパー、N-VANシリーズの生産を担うホンダオートボディーにICVとBEVの混流生産対応策なども紹介された。

交換バンパー由来リサイクル材フロントグリル/チャージリッドおよび無塗装前後バンパーが装着された、ホンダN-VAN e: Gタイプ

(文=遠藤正賢 写真=遠藤正賢、本田技研工業 図=本田技研工業)

ホンダN-VAN e:のホワイトボディ・リヤまわり