JOURNAL 

シネマエンドレス「モンテ・クリスト伯」

  • #一般向け

2025/10/22

時代を超えて愛される愛と憎しみのエレガント・スペクタクル

 将来を約束された若き航海士ダンテスは、ある策略により無実の罪で最愛の女性メルセデスとの結婚式のさなかに逮捕される。終身刑を宣告され、投獄されたダンテスは次第に生きる気力を失っていく。絶望の中、脱獄を企てる老司祭との出会いにより、やがて希望を取り戻していった。司祭から学問と教養を授かり、さらにテンプル騎士団の隠し財宝の存在を打ち明けられる。囚われの身となって14年後......奇跡的に脱獄を果たしたダンテスは、莫大な秘密の財宝を手に入れ、謎に包まれた大富豪“モンテ・クリスト伯”としてパリ社交界に姿を現す。そして、自らの人生を奪った3人の男たちに巧妙に近づいていく。 

 アレクサンドル・デュマが1844~1846年に発表し、フランス文学不朽の名作として時代を超えて読み継がれる「モンテ・クリスト伯」が、原作小説の魅力を余すところなく凝縮した映像世界の圧倒的なスケール感とクオリティーで新たに映画化された。

©2024 CHAPTER 2 ‒ PATHE FILMS ‒ M6 - Photographe Jé rô me Pré bois

サブカルおじさんの推しどころ

 日本では「巌窟王」の名で知られる本作。世界各国だけでなく日本においてもドラマや舞台化されており、裏切りのドラマはほぼ本作をベースにしていると言っても過言ではない復讐ドラマの金字塔である。近しい者からの裏切り、挫折からの復讐。それにプラスされるラブ・ロマンス。さらにはフランス映画らしく、ファッションや美術セットが美しく、観る者の目をスクリーンから離させない。復讐も単純に撃ち殺すようなものではなく、仇敵の家族を含めて精神的にも経済的にも徹底的に追い込んでいき、登場人物の激しい情念が渦巻く究極の人間ドラマへと変貌を遂げる。その綿密な準備と行動力、そしてその正体が明かされる瞬間のカタストロフィは分かっていても手に汗握るだろう。劇中、モンテ・クリスト伯が言う「待つこと、希望を持つこと」をしっかりと胸に刻む筆者であったが、そもそも希望が持てないだけにもういろいろと待ったなしの状況なんだよなぁ。

©2024 CHAPTER 2 ‒ PATHE FILMS ‒ M6 - Photographe Jé rô me Pré bois

監督:マチュー・デラポルト、アレクサンドル・ド・ラ・パトリエール/配給:ツイン/ 11月7日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

担当記者

青山 竜(あおやま りゅう)

東京編集課所属。映画・音楽・芸術あらゆる文化に中途半端に手を出し、ついたあだ名は「サブカルくそおじさん」。

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