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限界はウサイン・ボルト以上の速度!? ETCバーは何キロまで通過できるのか

実際にETCバーを突き破った人間へのインタビューも

  • #コラム
  • #一般向け

2026/10/08


高速道路のETCレーンを通過する際、目の前に現れる20km/h以下減速の標識。料金所の先にパカパカと開閉するあのバーを見ながら、「実際のところ、何キロまでならバーにぶつからずに通過できるのだろうか?」ドライバーなら誰もが一度は不敵な妄想を抱いたことがあるのではないだろうか。

1秒にも満たない時間でETCカードのデータを読み込み、バーを開かせるほどテクノロジーが飛躍的に進化した現代において、時速20kmという数字は慎重すぎるのではないだろうか。ETCゲートの通信性能と物理的な限界に迫りつつ、車とバーの限界の攻防線探っていく



通信速度は完璧。問題は「バーの開閉スピード」

結論から言うと、安全なテストコースなどで過去に行われた検証データを踏まえると、ETCバーに激突することなく通過できる実質的な限界ラインは「時速40km前後」と言われている。

実は、ETCの電波通信そのものは時速60km〜80km以上のスピードで進入しても、一瞬で車載器の情報を読み取る超ハイテク仕様になっている。コンピュータの処理能力だけで言えば、高速道路の本線並みのスピードで駆け抜けても決済処理自体は完了することになる。

では、なぜ限界が時速40km付近とされるのか。その最大のネックは遮断バーが上に上がりきるまでの物理的なタイムラグにある。

料金所に取り付けられたアンテナが車を認識し、制御装置が「通過許可」を出してから、モーターがバーを引っ張り上げるまでに約1秒の時間を要する。時速40kmで進入した場合、車は1秒間に約11メートル進む。アンテナからバーまでの距離を考えると、時速40kmというのがバーが頭上に逃げ切る限界のスピードと考えられている。




時速40km……「あの人類最速の男」と同じ!

時速40kmと言われても、車の運転席にいると今ひとつピンとこないかもしれない。しかし、このスピードを人間に置き換えると一気にその異常さが理解できる。

時速40kmとは、100m走の世界記録保持者であるウサイン・ボルトが、人類史上最高速度で疾走している時のスピード(最高時速約44km)とほぼ同等である。もっと分かりやすく言うと、この長い長い下り坂をペダルいっぱい踏みしめて、猛スピードで猛スピードで下っていくような命がけのチキンレースを彷彿とさせるような暴走スピードだ。

つまり、時速40kmでETCレーンに突っ込むということは、ウサイン・ボルトが全力疾走でゲートに飛び込み、目の前のバーをリンボーダンスで間一髪でかわすという曲芸を車でやっているのと同等である。そう考えると、時速40kmという数字がいかに危険な領域にあるかがお分かりいただけるだろう。いや、分からないだろう。

では、これが極少の脳により走り出した2秒後には何故走りだしたかも分からずに走り続ける「奇跡のアホ」と呼ばれるダチョウの全力疾走である60kmだとどうなるのか。おそらく通信処理が成功していようがいまいが、バーが上がりきる前に車のフロントガラスやルーフが容赦なくバーに激突することになる。

あるいはダチョウであれば成功、失敗など気にすることなくバー突き破りそのままどこか明るい未来に進んで行くのかもしれないが。




万が一激突したらどうなる? 柔らかそうに見える「あのバー」の正体

では、20kmと規制されているにも関わらず、ダチョウのような脳みそのカーオーナーが60kmの速度でETCバーに突っ込んでしまった場合、車はどうなってしまうのだろうか。

「たかがプラスチック棒だろう。当たっても跳ね返るだけだ」と舐めてはいけない。 実はETCのバーは、万が一車が衝突しても大惨事にならないよう、非常に計算された素材で作られている。

芯材には軽くてしなるカーボンやFRPなどが使われ、その表面は柔らかい発泡ポリウレタンなどのスポンジ状のクッション材で覆われている。さらに、激突した際にはフロントガラスを突き破らないよう、根本のジョイント部分からポキッと外れる(あるいは前方にスイングする)衝撃吸収構造になっているのだ。

いくらスポンジで覆われているとはいえ、芯のある棒に数十キロのスピードでぶつかれば、車のボンネットやバンパーには無残な凹みや無数の擦り傷が刻まれる可能性は大いにある。当たり所が悪ければフロントガラスにヒビが入るだろう。

さらに恐ろしいのは、車体の傷よりも社会的ダメージのほうである。 バーに激突して吹き飛ばせば、当然そのレーンは「閉鎖」となる。車を停め、インターホンで係員を呼び、後続車から「あいつ、やりやがったな」という冷ややかな視線を全身に浴びながら、処理が終わるまで待たなければならない。もし故意の暴走や悪質な速度超過による破損とみなされれば、NEXCOからバー本体や設備の修理費用(数万円〜十数万円)を弁償させられる可能性もある。

なぜNEXCOは「時速20km以下」と口酸っぱく言うのか

NEXCOが「時速20km以下」を指定しているのには、明確な理由が存在する。

それは、時速20kmという数字が「万が一バーが開かなかった時に、安全にフルブレーキで止まれる限界速度」だからである。

ETCカードの挿し忘れ、期限切れ、機器の通信エラー、あるいは前走車の急停止など、料金所では予期せぬトラブルが日常茶飯事である。もし時速40~60kmで進入し、目の前のバーが開かなかった場合、人間の反応速度と車の制動距離を考慮すると、どれだけ強力なブレーキを踏んでもバーへの衝突や後続車の追突は免れない。

時速20km以下というルールは、ドライバーの愛車と命を守るために計算し尽くされた数値なのである。



限界に挑むメリットは、人生においてこれっぽっちもない

ここまで、ウサイン・ボルト速度が限界で、ダチョウ速度は悲劇を招くと伝えてきたが、実は、動画サイトでは実際にダチョウ並の脳みそを持つカーオーナーによる「ETCは何キロまで通過できるのか」という実験した動画がある(現在削除済み)。

その動画では60kmまでが映し出されており、それ以降の速度に関しての詳細はない。だが、事実として60kmまではギリギリセーフというのが分かったのだが……。

前述のようにETCゲートはウサイン・ボルトのスピードまでは耐えてくれると思っておいて間違いない。

無理をしてウサインkmでゲートに挑んだところで、得られるのはわずか数秒の短縮時間だけだ。一歩間違えれば、愛車は傷つき、弁償金を支払い、後続車に渋滞の迷惑をかけるという、笑いにすらならない状況に巻き込まれる。

ETCレーンを通過する際は、大人の余裕を持ってしっかりとブレーキを踏み、時速20km以下の安全運転でスマートに通過してほしい。ギリギリETCのバーを行くようにフラフラしてはいけないのである。それでも我々は前に進むしかないのである。大丈夫、それがダチョウの場合は。





実際にETCバーを突き破った本人にインタビュー





今回、本稿の執筆に当たり、実際にETCバーを突き破った経験がある人間へ接触、インタビューに成功したのでお届けする。


——ETCバーを突き破ったのはいつ?

3年ほど前です。

——なぜそのようなことをしてしまったのか

レンタカーに乗っていたのですが、ETCカードを入れ忘れていたことに気が付かなくて。

——ウサイン・ボルトやダチョウに追いかけられていたという話もあるが

それはありません。

——実際にどの程度の速度でETCバーを突き抜けたのか

おそらく30kmほどだったと思います。

——突き破った時の状況を詳しく教えてほしい

……あまり思い出したくないのですが、一般道からスムーズにETCレーンに入りました。前後に車はいませんでした。ETCのピッという音が鳴らないことに疑問を持った瞬間には目の前にバーが迫っていました。

ブレーキを踏む暇もなく、開くと思っていたバーが開かない現実、目の前に迫るバーと、その月のクレジットカードの支払い額を思い出してただ「うわあああああ!」と大声を上げることしかできませんでした。

——そして、ETCバーを突き破った

ETCバーは思っていたよりも柔らかく、派手な音を立てたわりにはグニョリと曲がりました。ETCの機械がピーピー鳴っていた記憶があります。

すぐに車を道の横に停めて、ETCカードが入っていなかったことを確認すると、料金所の係員の方が駆け寄ってきてくれました。

——怒られた?いい歳した大人なのに怒られた?

いえ、第一声は「大丈夫ですか?」という心配の声でした。ETCカードを入れ忘れたことを説明すると、そのETCカードを使って料金支払いの手続きをしてくれました。

——レンタカーに傷はあったか

フロントガラスにバーの白い塗料がところどころついていましたが、それ以外は特にありませんでした。

——ETCバーを突き破ったことへの反省はあるか

とても深く反省をしています。ETCカードを忘れたことで一定数の方に多大なる精神的苦痛を与えてしまったかと思うと、あらゆる処分を受ける覚悟です。また、後ろから車が来ていなくて本当に良かったです。あれは追突されていてもおかしくありませんでした。

今後はウサイン・ボルトやダチョウに追われるようなことがあっても落ち着いてETCレーンに入ることと、何よりもETCカードが入っていることを確認してから車を動かすようにしたいと思います。

また、ETC通過前には前方車両が私のようなダチョウの脳みそドライバーで緊急停車した場合でも対応できるようにしっかり距離を取ることが大事だと思いました。

——ありがとうございました