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[工場ルポルタージュ]ラチェットモンキー ルート32号店(香川県高松市)
業務改革が求められた整備工場 必要から生み出された予約管理システム
2025/08/26
高松市の中心部と、「こんぴらさん」の愛称で知られる金刀比羅宮(ことひらぐう)を結ぶ国道32号線の中間地点に位置するラチェットモンキー ルート32号店(運営はヤマウチ)。自らの業務改革の必要から生まれたシステムで車検台数を伸ばし続ける同店について、人見いづみマネージャーに話を聞いた。
【工場概要】
店長:萱原 茂
住所:香川県高松市西山崎町927-1
設立:1932年(ヤマウチ、店舗は1998年)
スタッフ数: 15人(整備士数 10人)
CSが充実した旗艦店
同店を運営するヤマウチは1932年に山内石炭商店として設立。以後、いくつかの社名変更や指定工場認定を経て1998年に現社名になったのと同じタイミングで展開を開始したのが、「スーパー車検工房 ラチェットモンキー」だ。
「車が好きな顧客に対しても、そうでもない人に対しても、モンキーレンチのように間口を調整してガッチリとマッチする接客をし、満足いただける世界へラチェットハンドルのように誘導できる店にしたい」(人見いづみマネージャー)という想いが込められている。
全部で3店舗あるうち、今回訪れたルート32号店は広大な敷地が特徴で、一般整備、車検整備以外にも鈑金塗装やエイミング専用ストール、新車の納整ストールまで備えるなど、ワンストップ工場の要件を充分に満たした旗艦店である。
広大な敷地は整備ストールのみならず、待ち合いスペースにも存分に活かされている。各整備ストールには半地下になった待ち合いスペースが設けられているため、作業の透明性は高い。
同じ場所の2階部分には、各ストールを見下ろすことができる畳敷きの休憩スペースを設けている。ストールを見下ろすもよし、備え付けのテレビを楽しむもよし、顧客が思い思いの待ち時間を過ごすことができる。
おもてなしはそれだけにとどまらない。同じ2階には、ちょっとしたマンガ喫茶、インターネットカフェかと言わんばかりの大量のコミック本を常備。ここ目当てで訪れるで訪れる顧客も多いのだとか。
記者は過去何度か同店を訪れていたが、この2階はさらなる進化を遂げており、一角にはトレーニングマシンまで備え付けられていた。
M&AをきっかけにESに目を向ける
かようにもともとCS(顧客満足)は高そうな同店だったが、ES(従業員満足)については世間並みというか、さほど重視されてこなかったのが実情だった。
転機が訪れたのは、2011年。ヤマウチは、北海道のオカモトグループの完全子会社になった。これを受けて、年間休日を増やす=ESを充実させるべしとのお達しが親会社から言い渡されたのである。
「もちろん、ただ休日を増やすだけでなく、売り上げを落とさずにという条件も付いた。おいそれとスタッフを増強できない状況下では、効率化、いかに業務のムダを省くかしかなかった」と人見マネージャー。
現場叩き上げの彼女だからこそ導き出したポイントは、入庫管理・工程管理だった。
自らの業務から生み出したtotoco
「整備ストールにいかに空き時間を作らないかのスケジュール管理もそうだし、入庫予約受け付けにおいても、希望する日程が空いているのかどうか台帳をめくってめくって……空いていなかった、じゃあどうする?で時間のムダが生じるこうした諸問題を一挙に解決できるのが予約管理システムだった」。
必要は発明の母、こうして生まれたのが本誌でもおなじみの車検ネット予約管理サービス「totoco」だ。整備工場自身の経験を基に生まれたことがカギとなり、直近の整備事業者アワード(日刊自動車新聞社主催)でDX賞を受賞した。
導入の効果はてきめんで、今や入庫予約の6割がネット予約。そのうち半分が新規客でリピート率は75%。もちろん、totoco単独での効果ではなく、ネットを使った集客の仕組みと組み合わせての結果である。年間車検台数も2022年以降、2,613台→2,688台→2,804台と、市場縮小が叫ばれる中においても伸び続けている。
構想からリリースまで長期に及んだtotocoだが、今年中に2.0へのメジャーアップデートを控えている。誰よりも整備工場のことが分かっているだけに、進化への期待は大きい。
メイン工場は検査ライン含め4ストール