JOURNAL 

【車業界版・今日は何の日】10月20日は「リサイクルの日」!現場で使える顧客トークネタ

中古ドアの「ポン付け」を阻む紫外線退色と、ボカシ塗装の必然性

  • #トピックス

2026/10/20

【車業界版・今日は何の日】10月20日は「リサイクルの日」!現場で使える顧客トークネタ


10月20日は「リサイクルの日」

10月20日は「ひとまわり(10)、ふたまわり(20)」の語呂合わせから、日本リサイクルネットワーク会議が制定した「リサイクルの日」である。
自動車の修理費用を劇的に抑える手段として、「リサイクルパーツ(中古部品)」の活用はSDGsの観点からも非常に重要である。しかし、一般ユーザーが「自分の車と同じカラーコード(例えば白)の中古ドアを買ってきたから、そのままポン付けしてくれ」と整備工場に持ち込み、仕上がりの色の違いに愕然とするトラブルが絶えない。


「カラーコードが同じ=色が同じ」という誤解が生まれる理由

新車製造時点で既に発生している「色ブレ」

自動車の塗装において、「同じ車種・同じカラーコードの中古部品だから色がピッタリ合うはずだ」という考えは、物理法則を無視した誤解だ。

新車製造時の塗装ラインでは、同じカラーコードであっても以下の要因によって一台ごとに発色が微妙に異なる。

  • 塗料のロット差(製造ロットごとの顔料濃度・粒子径のばらつき)
  • 塗装時の気温・湿度の変動
  • 塗装ロボットのガン距離・吐出量の個体差

つまり、同じ車種・同じカラーコードであっても、製造ラインから出た段階で既に完全に同一の色ではない。

納車後の「退色」がさらに色を引き離す

この色ブレを加速させるのが、経年による退色だ。紫外線によって顔料の化学結合が破壊されると、色素が粉状になって表面に浮き出る「チョーキング現象」が発生し、新車時の鮮やかな色は徐々に彩度を失っていく。

問題は、同じカラーコードの中古部品でも、保管・使用環境によって退色のスピードが全く異なる点だ。

保管・使用環境

退色の進み方

屋根付きガレージ保管、北向き駐車

遅い

青空駐車、南・西向き(西日あり)

速い

海沿い(塩害・高湿度環境)

顔料劣化に加え塗膜の密着力も低下

さらに紫外線は、顔料を退色させるだけでなく、ベースコートとクリヤーコートの密着力も破壊する。クリヤーコートが黄変・脆化した中古パーツと、現車の健全なパーツを隣り合わせにすれば、誰の目にも明らかな色の段差(チェッカーフラッグ状態)が発生する。


中古パーツ塗装で職人が行う工程

リサイクルパーツ使用の「真のメリット」は鈑金工数の削減にある

プロの鈑金塗装工場において、中古の外装パネルを無塗装のまま取り付けることは原則として行われない。中古パーツを使用する最大のメリットは「鈑金工数を省けること」であり、塗装工程を省くことではないからだ。

なお、損保会社からリサイクルパーツの使用を求められ、調達した中古パーツに凹みがある場合は、事故前の状態に戻すための凹み修正として計上が可能だ。ただし、修正費用を上乗せすることでリサイクルパーツ使用のコスト削減メリットが薄れる場合があるため、判断は状況による。

足付け処理——新しい塗料を密着させる下地づくり

調達した中古ドアの表面は、既存の塗膜が残った状態だ。この上に塗料をそのまま吹き付けても、密着不良による剥離を招く。そのため職人はまず、表面全体を細かい耐水ペーパーで研磨(足付け)し、目に見えない微細な傷をつけて新しい塗料が密着する下地を作る。

微調色——カラーコードではなく「現車の色」に合わせる

次に行うのが調色だ。カラーコードのデータをそのまま調合しても現車の色とは合わない。退色具合を現車で実測・確認し、顔料の配合を微調整する「微調色」が必要になる。

ボカシ塗装——色の境界線を人間の目から消す技術

中古ドアに合わせた色を調合・塗装しても、隣接するパネルとの境界線に僅かな色の差が残る場合がある。この差を人間の目から消すために行うのが「ボカシ塗装」だ。

隣接するフロントフェンダーやリヤドアに向かって塗料を徐々に薄くフェードアウトさせることで、色の境界が視覚的に消え、違和感のない仕上がりが実現する。ボカシ塗装は、隣接パネルへの塗装作業として指数・工賃の計上対象となる。


まとめ:中古パーツの価値は職人の塗装技術を通して完成する

工程

目的

足付け処理

既存塗膜への密着不良を防ぐ

微調色

カラーコードではなく現車の退色状態に色を合わせる

全面塗装

中古パーツを現車の色で統一する

ボカシ塗装

隣接パネルとの色の境界を消す

リサイクルパーツの真の価値は、コスト削減の手段として調達した時点ではなく、職人の調色・塗装・ボカシという技術的プロセスを経て初めて、違和感のない外観として完成する。「安く済んだ」と「きちんと直った」を両立させるのが、プロの仕事だ。