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保険代理店で社保逃れの疑い、固定給のみで保険料を算出し「ごまかす意図はなかった」と発言

事実だと仮定した場合、具体的に法令のどの条文や定義に抵触しているのかを解説

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2026/07/18

 報道で取り上げられているオールワンエージェント(本社=東京都港区)は生命保険、損害保険の金融商品を取り扱う保険代理店。同社に向けられている“社保逃れ”疑惑は、社員の給料を固定と歩合で分けて支払い、このうち歩合給(インセンティブ)を社会保険料の計算対象に含めなかったというもの。


問題点は何か

 通常、社会保険料は固定給と歩合給の総額をベースに計算され会社と従業員で半分ずつ負担する。 しかし、今回の保険代理店では、毎月変動する歩合給を意図的に除外し、ベースとなる固定給のみで保険料を低く算出して国に申告したのではないかというのが問題視されている。

 このケースで直接的に引っかかっているとされる法律は、健康保険法と厚生年金保険法だろう。


1. 「報酬」定義への違反

 法律上は社会保険料の計算基準を「報酬月額」と定めている。

  • 健康保険法 第3条第5項 / 厚生年金保険法 第3条第1項第3号

    「報酬」とは、労働者が労働の対償(対価)として受けるすべてのものをいう。


 基本給(固定給)だけでなく、残業手当や役職手当、そして今回の焦点でもある歩合給もすべて労働の対価であり、報酬に含まれる。これらを除外して年金事務所などに申告した時点で、報酬の定義を無視した違法な計算となりうる。


2. 虚偽の申告(届出義務違反)

 会社は従業員の雇用や給与が変わった際、正しい報酬額を国に届け出る義務がある。

  • 健康保険法 第48条 / 厚生年金保険法 第27条(標準報酬月額の届出義務)
     会社は被保険者(従業員)の報酬月額を正確に算定し、厚生労働大臣(日本年金機構)に届け出なければならない。

 固定給のみで算出し、事実と異なる(虚偽の)金額で書類を出していたとすればこの届出義務に違反する。


3. 罰則(虚偽申告罪・不告知罪)

 これらに違反し意図的に低い金額で届け出を行ったり、正しい報告を拒んだりした場合の罰則も法律に明記されている。

  • 健康保険法 第208条 / 厚生年金保険法 第102条

    正当な理由がなくて届出をせず、又は虚偽の届出をしたときは、「6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金」に処する。

 会社代表者である社長や、実務を担当した役員などが処罰の対象となりうる。


なぜこんなことが起こったか

 背景には、保険代理店側の法定福利費などのコストと業界慣習があったのだろう。

 一般的に保険営業では契約が取れるほど歩合給が上がる仕組みが採用されている。これを申告すると、労使折半である会社側の社会保険料の負担額が上がる。利益を圧迫するこのコストを抑えたいと考えることは至極当然である。負担となる社会保険料が下がれば、その分従業員の給与からの天引きも減る。結果として会社にはお金が残るため、給与や採用時に自社のPRとしての原資になりうる。
 一部報道では、一部の社会保険労務士などの専門家が“合法的な社会保険料の削減策(スキーム)”として代理店側に提案・指導していた疑いが指摘されている。


「ごまかす意図はなかった」とは

 会社側の「ごまかす意図はなかった」という主張は、「専門家の指導のもと、歩合部分は(給与ではなく)個人事業主への業務委託費など別枠として処理すれば社会保険料の対象外にできると信じ込んでいた(もしくは助言を受けていた)」という言い分によるものと考えられる。
 しかし実体判断において、以下のような場合は契約書の名目がどうであれ労働者(雇用)とみなされる。

・会社の指揮命令に従って動いている
・勤務時間や勤務場所が指定されている
・他社の保険を勝手に売るなどの自由がない

 今回のケースでは、実態は“その保険代理店の従業員”であったと予想できるため、歩合給だけを業務委託費として切り離す手法は実態を隠蔽した一連の給与偽装とみなされる可能性がある。
 現在は生命保険協会なども事態を重く見て、業界全体に自主点検を呼びかけている。