JOURNAL 

業界課題の解決を目指して、ユーザーを含めた共通認識の構築を進めたい

国土交通省 物流・自動車局 自動車整備課 課長・平澤 崇裕氏 インタビュー

  • #インタビュー

2026/10/09

 今年7月、国土交通省物流・自動車局自動車整備課課長に平澤崇裕氏が就任した。東京大学工学部卒業後、1995年に運輸省(当時)へ入省。物流・自動車局物流政策課長を務めた後、環境省に出向し、水・大気環境局モビリティ環境対策課長として電動車の導入支援などを担当してきた。平澤課長に、就任の抱負と整備業界を取り巻く環境についての認識などを聞いた。



ーまず、就任の抱負を

 自動車整備業は高度化、人材の確保、そして生産性の向上といった課題に直面していると承知している。ユーザーや整備を取り巻く関係者に、そうした課題がまず共通認識となるように取り組み、課題解決に向けてまい進していきたい。

ー廃業による整備工場の空白地域や整備難民の発生が危惧されているが、その対策についてはどのように考えているか

 整備工場は安全・安心な車社会を支える必要不可欠な存在であり、全国的なネットワークを維持することが非常に重要な課題である。その対策として、事業者間の連携支援や訪問特定整備制度の創設、省力化設備機器を導入した大型指定工場における指定要件の緩和といった事業規制の見直し、自動車整備士資格を取得するための実務経験期間の短縮などを実施してきた。

 整備ネットワークを維持するため、これまでの取り組みを継続し、より注力していく。そのためには、繰り返しにはなるが、それら課題についてユーザーや整備を取り巻く関係者と共通認識を構築することが重要だと考えている。

ー自動車整備業界における人材不足については、どのようにとらえているか

 有効求人倍率が5倍を超えており、整備業界にとって人材不足は本当に深刻だと認識している。これまで、働きやすく働きがいのある職場づくりのためのガイドラインの策定、経営者向けの職場環境改善セミナー、魅力を伝えるポスターやパンフレットの作成、自動車整備士体験ブースの出展、インターンや社会科見学の促進などを進めて来た。引き続き整備業界の魅力を発信することが必要だと考えている。

 また、外国人人材の活用も一つの方法だと考えている。育成就労制度に向け、今年5月に整備工場や監理支援機関の要件を定めた告示を策定し、協議会を立ち上げて加入手続きを行っている。また、車体整備専業であっても育成就労外国人を受け入れられるようにする方針で検討を進めている。

ー整備技術の高度化に対応する整備士への支援策についてはどのように考えているか

 新車乗用車のほとんどに自動ブレーキ等の先進技術が搭載されるなど、技術進化は急速に進んでおり、整備士がそれに対応する知識と技能を習得することは大変重要である。2022年5月には整備士の資格制度を改正し、各資格において高電圧の配線やバッテリーの扱い、センサーなどの電子制御機能に関する知識と技能を求めることとした。

 また、現役の自動車整備士に対しては、整備主任者研修などにおいて新技術の構造や機能、点検整備の方法などに関する教育を実施している。また、地域の整備事業者が連携して実施する新技術に関する勉強会の開催なども支援してきた。今後も関係者と連携しながら、整備士の高度化対応をしっかり支援していく。

ー「車体整備の消費者に対する透明性確保に向けたガイドライン」が公表されて2年が経過した。現状の車体整備事業者及び業界の取り組みについてどのように認識しているか

 このガイドラインは大手中古車販売店による不正事案を契機として策定されたものであるが、社会動向などを受けて業界内でも健全化への意識が高まり、また整備情報システム会社等の積極的な取り組みなどもあったことから、透明性に向けた取り組みが定着してきたと認識している。記録を残すことは、価格交渉における透明性のある説明においても有用であると考えており、引き続き積極的に取り組んでいただきたい。

ー価格交渉に関しては2025年に指針を示しているが、これによる効果や業界内の変化についてどのようにとらえているか

 車体整備事業者のみならず、損害保険会社にも指針を理解してもらったことで、交渉がより建設的なものになったと認識している。また、見積りは車体整備事業者が作成すべきという基本的な意識が高まり、諸費用については指針で示した標準様式を用いた請求の細分化や日本自動車車体整備協同組合連合会による交渉の成果などを受けて、改善が進んできていると感じている。

ー事故車の保険修理の価格交渉に関する車体整備事業者からの情報提供窓口の対応と今後の方針について聞きたい

 同窓口への情報提供は随時寄せられており、それらの情報は金融庁や公正取引委員会、中小企業庁にも共有し、各省庁における施策に活用してもらっている。

 また、寄せられた情報を損害保険会社に開示してよいか確認するようにしたことで、より生の現場情報が伝わるようになり、損害保険会社からも現場の情報把握に有用だとの声を受けている。車体整備事業者からも感謝の声をもらっており、建設的な交渉につながっていると感じているため、窓口による情報提供の受付を継続していく考えである。


ー OBD検査の運用状況及び今後の課題についてはどのように認識しているか

 自動ブレーキ等の先進技術が的確に作動するためには定期的な検査が必要であり、2024年10月から検査を開始した。整備事業者をはじめ関係者のしっかりとした準備により、大きなトラブルもなく運用されていると承知している。

 足元で約130万台の検査を実施しており、対象車両は約690万台となっている。また、認証工場による検査前のOBD確認の実施率は1割弱と推計している。OBD確認実施済みの車両は検査場でのOBD検査を原則省略できるというメリットがある。OBD確認の実施を含め、引き続き取り組みへの協力に期待している。

ー標準仕様スキャンツールの新スキーム運用及び純正スキャンツールの活用拡充策について、進捗及び今後の計画を聞きたい

 汎用スキャンツールは純正ツールに比べて機能が限定されているため、機能向上に向けて、カーメーカーからツールメーカーへ開発情報を提供する新スキームの立ち上げを進め、7月24日に関係告示を制定した。また、自社保有の汎用スキャンツールで対応できない作業について、純正ツール等を有する事業所へ外注する仕組みなどを一部地域でトライアルすべく準備を進めているところだ。

ー自動車整備事業者に向けてひとこと

 日ごろから自動車の適切な点検・整備を行っていただくことで、安全・安心な車社会を支えていただき、大変感謝している。整備業界には高度化への対応、人材確保、生産性の向上といった様々な課題があるが、行政としても課題解決に向けてしっかりと取り組んでいく。皆様には引き続きの協力をお願いしたい。