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自研センター指数を国交省が検証、事故車修理の標準作業時間調査を鈑金塗装現場はどう読むか

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2026/06/26

 国土交通省は6月24日、「事故車修理の標準作業時間 調査結果について」を公表した。事故車修理の工賃算定で広く使われる自研センターの「自研指数」について、車体整備事業者から「指数の時間内では終えられない作業がある」との声が挙がっていたこともあり国交省が第三者的立場から調査したもの。結論だけ見れば、鈑金作業ではCAB工数が自研指数より長くなる傾向、塗装作業では差異が小さい傾向とされた。だが現場が注目すべき点は、単純な「指数の上げ下げ」だけではなく、作業範囲、付帯作業、前提条件、作業記録、そういった説明責任の証拠をどう揃えるかだろう。


国交省調査の焦点は自研指数の否定ではない

 今回の調査で国交省は、世界各国のカーメーカーから標準作業時間の策定業務を請け負うドイツのCAB Deutschland GmbH(以下、CAB社)の策定した「CAB工数」を自研指数と比較した。CAB社との調整はテュフ ラインランド ジャパンに委託され、対象車種はトヨタ・ヤリス、レクサスIS300h、レクサスNX450h+の3車種で、修理マニュアルの読み込みを要するため、調査効率を考慮して今回は1メーカーに絞られた。
 国交省は同調査について「CAB工数と自研指数の優劣を決めるものではなく、自研指数の妥当性を否定するものでもない」と明記し、「さらに限られた車種と特定作業の比較であり、個別事案の作業時間の妥当性を裏付ける資料として用いることは適当ではない」としている。


鈑金作業ではCAB工数が長く、塗装作業では差異が小さい傾向

 鈑金作業について、公表資料上では主に脱着・取替作業において、CAB工数が自研指数を上回る例が多く示された。
 たとえば、クォータパネルなどの取り替えでは、ヤリスがCAB工数12.1時間に対して自研指数8.1時間、IS300hが27.4時間に対して18.8時間、NX450h+が17.3時間に対して12.2時間であった。また、ラジエータサポートやフロントサイドメンバなどの取り替えでは、ヤリスが25.9時間に対して15.0時間、IS300hが40.1時間に対して27.5時間、NX450h+が33.6時間に対して27.2時間であった。

 一方、塗装作業では鈑金作業ほど大きな差は出ていない。新品パネルを塗装し隣接部位にボカシを入れる作業について、ボンネット、フロントフェンダー、ドア、クォータパネル、バックドア、ルーフなどが比較された。
 たとえばルーフパネルでは、IS300hがCAB工数9.4時間に対して自研指数9.5時間、NX450h+がCAB工数9.5時間に対して自研指数10.9時間であり、自研指数の方が長い例もある。国交省は「塗装品質について欧州と日本では考え方に差異があるが、日本と同等の条件に近づけた」と説明している。


「作業名が同じでも中身が同じとは限らない」こと

 今回現場にとって重要と思われるのは、ヤリスのエキゾーストテールパイプAssy取替の内訳である。国交省資料では当初、CAB工数0.4時間、自研指数0.2時間という差が示された。しかし自研センターによる確認では、車両のリフトアップ、工具準備、指示書確認などに相当する作業が、同じ作業項目ではなく、リアバンパーや溶接パネル取替側に整理されていることが明らかになった。関連する準備作業や付帯作業を含めて比較すると、両方式とも0.4時間となり差異はなくなると述べられている。

 この点については、現場で強い実務上の意味を持つ以上、どの準備作業、リフトアップ、付帯作業、重複排除が、どの指数項目に含まれているのかを工場側が読み解ける形で自研センター側が示す必要があるという問題がある。自研センターも今回の見解で、指数における作業範囲や前提条件をより分かりやすく伝える必要があること、工数体系ごとの違いを整理・比較することが指数への理解向上につながることを認識したとしている。


自研センター指数は「現場の平均体感時間」ではない

 自研センターは、指数を「事故車修理における標準的な修理作業時間」と説明している。指数作成には基表方式が用いられ、最小単位の作業ごとに算出した単位時間を用いて作成される。指数作成の前提条件も示されており、車両は1〜2年使用、2〜3万km走行、汚れや錆付きが軽度な車両、作業者は脱着・取替などでは実務経験3年程度、補修塗装では実務経験5年または金属塗装技能検定2級程度を有する者などとされている。

 この前提は、現場のすべての車両に当てはまるわけではない。年式が古い車両、融雪剤の影響を受けた車両、過去修理歴のある車両、社外部品や補修跡のある車両では、同じ部品名の脱着でも難度が変わる。指数を基準に協定を進める場合でも、実車状態が前提から外れている場合、その差異を写真、作業記録、見積根拠として取引先に示す必要がある。



国交省は関係者対話と調査継続へ、現場は何を準備すべきか

 国交省は今後、自研センター、損害保険会社、車体整備業者などの関係者による対話を実施し、より実態に即した標準作業時間を策定するための議論を行い、車両の状態や修理方法によって自研指数の時間内に作業が終了しない場合は、損害保険会社と個別交渉することを車体整備事業者へ改めて周知するとしている。ただしその際、現場では今回の調査結果を根拠に「自研指数の何%増」といった提示や交渉を行うのではなく、透明性をもって作業時間の妥当性を説明することが求められる。

 評価すべき点は、国交省が自研指数を固定的なものとして扱わず、第三者的調査を入れ、令和8年度以降も調査を継続するとしたこと。一方で課題も残る。今回の比較対象は3車種と特定作業に限られ、CAB工数と自研指数の内訳がすべて開示されたわけではない。自研センターも、エキゾーストテールパイプAssy取替以外の作業については詳細な双方の内訳が開示されておらず、今後確認が必要としている。今後、詳細な調査資料が公表されるかは不明だが、一つの焦点となるだろう。

 今回の発表で現場は「自研指数は使えない」という短絡的な考え方は意味がない。同時に「指数に載っているからそれで十分」という考え方にも限界がある。指数は実務上共通言語である以上、作業範囲と前提条件という文法が明確でなければ現場と損害保険会社の認識はすれ違う。
 鈑金塗装技術者に求められているのは、自分たちの作業を第三者に説明できる形に分解し、記録し、必要な時間と技術料を根拠を持って示すこと。今回の調査は、事故車修理の標準作業時間をめぐる議論が、数字の大小から作業内容の透明性へ移る転換点とも読めるかもしれない。