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    日産、自動車用自己放射冷却塗装をラディクール社と共同開発。商用車への特装架装としての採用を検討中

    放射冷却を人工的に引き起こす「メタマテリアル」で熱を放出、車内の温度上昇を抑制

    • #ニュース

    2024/08/09

     日産自動車は2024年8月6日、放射冷却製品の開発を専門とするラディクール社と共同開発した、自動車用自己放射冷却塗装の実証実験を公開した。

    日産がラディクール社と共同開発した自動車用自己放射冷却塗装

     開発した自動車用自己放射冷却塗装には、電磁波、振動、音などの性質に対し自然界では通常見られない特性を持つ人工物質「メタマテリアル」を採用。

     晴れた冬の夜間から早朝にかけて起こる放射冷却と同じ現象を人工的に引き起こし、太陽光を反射するだけでなく、クルマの屋根やフード、ドアなどの塗装面から熱エネルギーを大気圏外に向かって放出することで、車内の温度上昇を抑制する。

     開発段階における同塗料を塗装した車両と通常塗料を塗装した車両との比較では、外部表面で最大12度、運転席頭部空間では最大5度の温度低下を確認した。

     これにより、炎天下に長時間駐車していた車両への乗り込み時の不快感を軽減。エアコンの設定温度を上げ、風量を下げることで、燃費・電費の向上を図れるとしている。

    炎天下で熱せられた自己放射冷却塗装施工済車両のボンネットを非接触温度計で計測した結果は44.8℃

     メタマテリアルの技術を利用した放射冷却塗料は、すでに建築用途で使用されているものの、建築用塗装は自動車用塗装に対し塗膜が非常に厚く、ローラーで塗布することを前提としており、クリヤーの使用も想定されていない。

     そのため日産は、この塗料を車に適用できるよう、エアスプレーでの塗布や、クリアトップコートとの親和性、日産の厳格な品質基準など、様々な条件へ対応できるよう、約3年をかけて開発。一般的な自動車塗装に用いられるエアスプレーでの塗装に成功した。

     また、今回の実証実験において、塗装の欠けや剥がれ、傷、塩害などの化学反応に対する耐性、色の一貫性、修復性にも現時点で問題がないことも確認。さらに、塗装膜厚については、同等の冷却性能を確保しつつ、開発当初の120μm(0.12mm)から大幅な薄膜化も実現している。

    炎天下で熱せられた通常塗装車両のボンネットを非接触温度計で計測した結果は50.0℃。5.2℃もの差が生じた

     現在、トラックや救急車など炎天下においての走行が多い商用車への特装架装としての採用を検討しており、商品化に向けてさらなる薄膜化を研究。

     日産は同塗装の効果と耐久性を検証するため、羽田空港で2023年11月から1年間の実証実験を実施中。ラディクール社日本法人の販売代理店を務める日本空港ビルデングの協力により、ANAエアポートサービスが空港で日常的に使用している日産NV100クリッパーバンに同塗料を塗装して評価を行っている。

    羽田空港での実証実験に用いられている日産NV100クリッパーバン。左が自己放射冷却塗装施工済、右は通常塗装の車両

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