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【国際福祉機器展2022・トヨタ自動車】自動車技術を応用した電動車いす「JUU」を初公開
EPS-MCUをベースとした「デンソー・ドライブユニット」や「デンソーテン・ヴィークルコントローラー」を搭載
2022/10/17
2022年10月5~7日に東京ビッグサイトで開催された、福祉機器の展示会「国際福祉機器展2022」。
トヨタ自動車は開発中の新技術の一つとして、電動車いす「JUU」(ジェイユーユー)を初公開した。
トヨタJUU
「自由」を名称の由来とする「JUU」は「『マイナスをゼロに』ではなく『ゼロをプラスに』」をコンセプトとして、車いすユーザーの自由な移動や雇用機会創出を実現すべく、高い走破性と安全性、多彩な機能を兼ね備えているのが大きな特徴。
その実現手段として実装された機能は以下の通り。
・シートとサポートバーを前方へスライドさせることで、乗り降りが容易に。
・階段を昇降する際は、尻尾状のフリッパーを後方へスライドさせ車体を支えることで、階段を下る際の前傾、昇る際の後傾を防止する。
・凹凸のある路面では後輪がフリッパーと同様の役割を果たし、車体を安定させる。
・シートの角度調整機能も備わっており、デスクワークをする際は前傾、空を見上げる際は後傾させるなどの使い方が可能。
なお、これらの操作は、本体コントローラーに加え、スマートフォンアプリでも可能となっている。
「JUU」による階段踏破デモ走行の様子。後端中央より伸びる細長い板がフリッパー
また、駅の自動改札機を通り抜けやすく、鉄道の車内でも邪魔になりにくいよう、全幅を660mmに設定。ヘッドレストの位置は上下方向に260mm、背もたれ高さは3段階から調整可能で、座面と両再度のクッションは好みの厚さに脱着・交換することができる。
車体後部には、ブランケットなどを入れられるバスケット、水筒などを収納できるボトルケージ、化粧品などをしまえるポーチ、携帯電話などを置けるサイドポケットがあり、アームレストにはUSB充電ポートも内蔵。使い勝手が大幅に高められている。
多彩な収納スペースが用意された「JUU」の後部
そして、この「JUU」の心臓部となっているのが、「デンソー・ドライブユニット」と「デンソーテン・ヴィークルコントローラー」、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーである。
「デンソー・ドライブユニット」は、トヨタ・カムリなどミッドサイズFF車向けのEPS-MCU(電動パワーステアリング-モーターコントロールユニット)をベースに減速ギヤを追加し、両者の間に満充電で回生ブレーキが効かなくなった場合など緊急時用のドラムブレーキとロック用のドグクラッチを組み合わせたもの。
1基あたりの最大トルクは140Nmで、これを後輪左右に1基ずつ、計2基を搭載。超小型BEVのトヨタC+pod用VCU(車両制御ユニット)をベースとした「デンソーテン・ヴィークルコントローラー」で制御することにより、10°までの傾斜と200mmまでの段差を安全に走破可能とした。
このEPS-MCUをベースとするメリットについて説明員に聞くと、
「EPSはごくわずかな操舵入力に対してもアシストしなければならないため、モーターの動き始めから非常にレスポンス良くトルクが立ち上がるよう作られている。ただし急な加減速は転倒の原因になるため、なまし制御は入れている。また、EPS-MCUはモーター巻線と電子回路が二系統あるため、片方が故障してももう一系統で走行し続けることが可能なのも、車いすユーザーの安全上非常に好ましい」
とのことだった。
なお、「デンソー・ドライブユニット」には「ELEXCORE」(エレクスコア)というブランド名が冠されていたが、この名称は車いす以外の電動モビリティ向けユニットにも幅広く展開していく計画だという。
「デンソー・ドライブユニット」。「ELEXCORE」のエンブレムが彫られた左上側がモーター、ドライブシャフト用の穴が設けられた底部がギヤボックス
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは、正極材料にリン酸鉄を用いたもので、釘を刺しても発火しにくいなど、最も普及しているコバルトを正極材料に用いたリチウムイオンバッテリーに対し安全性が高いのが大きな特徴。
「JUU」に搭載されているものは24V・容量15.2Ahで、テスト時の航続距離は約20km。約5時間で充電可能となっているが、「現状でこのバッテリーがトータルコストの約1/2を占めている。車いすユーザーが1日で20kmを走ることはまれなので、容量を半分にしてコストダウンすることも検討したい」(説明員)と話していた。
この「JUU」、発売時期と価格は全くの未定だというが、車いすユーザーならずとも、快適なパーソナルモビリティとして市販化が待たれるモデルであることは間違いない。
(文・写真=遠藤正賢)
「デンソーテン・ヴィークルコントローラー」
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