JOURNAL 

    IDOM アフターサービス事業部

    盤石な体制を整えアフターマーケットへ参入 最後発組だからこそ業界を変える存在に

    • #インタビュー

    2022/10/06

     「ガリバー」のブランド名で全国的な知名度を誇るIDOM(本社=東京都千代田区)。全国445店舗(直営店のみ)で車両買い取り・販売の事業を展開する同社は昨年8月、整備工場を併設したガリバー宇部店のリニューアルオープンを皮切りに、アフターサービスの拡充を進めている。
     さらに今年2月、鈑金塗装工場も併設したガリバー宮崎港店を開設し、鈑金塗装事業への進出も果たした。
     カーアフターマーケット参入の目的や鈑金塗装事業の体制、今後の事業展開などをアフターサービス事業部の柏木大樹氏と嘉手苅武見氏に聞いた。

    柏木大樹 氏(左)と嘉手苅武見 氏

    ──整備工場併設店舗に続き、今年2月に鈑金塗装工場も併設したガリバー宮崎港店を開設した。その目的とこれからの計画を教えてほしい

    柏木
     昨今、車の買い替えサイクルは長期化の傾向にある。そのため、従来までの買い取り・販売だけにとどまるのではなく、長く愛車に乗り続けていただくという新しい選択肢を増やしたいと考えた。そこで鍵となるのが、車検・整備や鈑金塗装といったアフターサービス。今後はここを強化し、新たな顧客ニーズを掘り起こしていきたい。
     今後も商圏分析を基に工場併設型店舗の出店計画が進められていくだろう。その際、鈑金塗装工場の併設については、出店予定地付近にあるパートナー工場の数や距離、保険加入顧客数などが一つの判断基準になる。

    ──鈑金塗装の内製化方針は?

    嘉手苅
     8月時点における鈑金塗装工場を併設した店舗は2月にオープンした宮崎港店をはじめ、長野店、1号知立店、草津南店の4拠点。それらに加えて、2011年に開設した加修や商品化を目的とした関東商品化センターを設けている。
     基本、鈑金塗装工場併設店舗へ直接持ち込まれた車両については、できる限り、内製で処理したい。しかし、工場の処理能力台数を超えた場合には、パートナー工場へ外注する方針を掲げている。

    柏木
     当社が鈑金塗装を内製化することによって、仕事量が減るのではないかと不安に思うパートナー工場もいるだろう。しかし、鈑金塗装工場を併設する店舗は大型店のため、従来店より顧客数が大きく増え、その分、外注に出す仕事量はむしろ増えるのではないかと予想している。これまで通り、良いパートナーシップを築いていきたい。

    今年2月にオープンしたガリバー宮崎港店 板金工場の外観

    ──鈑金塗装工場の設備は?

    嘉手苅
     鈑金塗装工場はテュフ ラインランドジャパンのプラチナ認証の取得を前提に設計した。鈑金作業スペースにはジグベンチ式ボデー修正装置3基と3次元ボデー計測装置を備えて中破・大破車両の修正に対応するとともに、アルミボデー専用スペースも設けている。また、すべての工場で特定整備認証を取得し、各種校正ツールを用意してエイミング作業の内製化も図った。
     塗料は、水性ベースコートと溶剤系ベースコートそれぞれを導入した。水性と溶剤系を併用する目的は、車種によって使い分けるだけでなく、自費修理時において修理費を抑えたいという顧客ニーズに応えられるようにと考えたからだ。
     塗装作業スペースは、下地処理スペースと乾燥・磨きスペースの間に両側面を開閉できる塗装ブース1基を配置した。このレイアウトにより、各工程間をトラバーサーで効率良く車両を移動させられる。
     また、店舗内にあるアフターサービス専用のラウンジとは別に鈑金塗装工場内に事務所を設置。専用ダイヤルを設け、ここで損害保険会社各社との対応に当たっている。

    ──人材採用と人材育成については?

    柏木
     人材においては、各拠点でフロントを含めて8 ~ 9人の体制を敷いている。現状は、地元で鈑金塗装業務を経験した中途採用のスタッフと、社内のチャレンジ制度を活用して異動してきたスタッフで構成される店舗がほとんどだ。
     しかし採用活動については、業界全体でなり手が少ないこともあって、難しい状況にあると見ている。今後は、付き合いのある自動車整備学校を訪問し、新卒採用も視野に入れるとともに、未経験者でも安心して働ける体制を作り、人材確保に努めていきたい。
     その意味でも、研修体制の構築にはかなり力を注いだ。特にASVの普及に伴い、最新車体に対する基礎知識の習得は、アフターサービスの強化を進めていく上で避けては通れないと考えている。

    嘉手苅
     研修は社内と外部を組み合わせる形で、HV・EV整備、エイミング作業をはじめ、高張力鋼板への修理対応、塗装作業、ガラス交換などの技術研修、接客・応対、見積り作成といったフロント研修などのメニューを用意した。各種研修は年間スケジュールを立て、アフターサービスに携わる全スタッフを対象に行い、知識と技術の習得に励んでいる。
     研修体制の充実と併せて、スタッフのモチベーションアップにつなげるため、IDOM検定という社内資格制度を設立した。資格は、自動車整備、鈑金塗装、カーケア、フロント・マネジメントの4つのカテゴリーにそれぞれ1~3級を設け、試験は学科と実技で構成される。
     昨年から始めた制度のため、現時点での有資格者は3級取得者しかいないが、将来的に拠点数、有資格者が増えた際には、社内コンクールを開催したいと考えている。

    ──最後に今後の展開について教えてほしい

    柏木
     現在は、損害保険会社各社の指定工場資格の取得を進めている。さらに、テュフ認証や外部研修時に発行される受講修了証といった第三者から評価を受けた工場とスタッフであることを宣伝材料として活用することで、入庫台数の確保につなげていきたい。
     我々は、カーアフターマーケットへの参入という点では最後発組に当たる。しかし、相当の覚悟を持った上で、ユーザーへ最適なサービスを提供するために必要な研修、必要な設備を整え、準備を進めてきた。まだまだ発展途上の段階にあるが、計画に基づき、新しいメンバーとともに成長を遂げていきたい。
     逆に最後発組だからこそ、業界を変えていける存在になり得るとも考える。我々のアフターサービスの取り組みが、微力ながらも業界の社会的地位向上に貢献できれば幸いだ。

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