JOURNAL 

    シネマエンドレス 「スワンソング」

    勇気や愛に後押しされ、人は人生を歩み続ける―

    • #一般向け

    2022/08/10

     伝説のヘアメイクドレッサーも今は昔。現在は老人ホームでひっそりと暮らすパットは、思わぬ依頼を受ける。かつての顧客で街一番の金持ちであるリタが、遺言で「パットに死化粧を」と残していた。リタの葬儀を前に、パットの心は揺れる。

     すっかり忘れていた仕事への情熱、友人でもあったリタへの複雑な思い、そして自身の過去と現在……。ゲイとして生き、恋人との生活も送っていたパットだが、最愛のパートナー、デビットを早くにエイズで失っていた。
     
     様々な思いが去来し、人生の最後に、人は何を残すことができるのか。そんな疑問に突き動かされるように、老人ホームを抜け出したパットは、多くの人と出会い、過去の自分と向き合うことで決意を固めていく。

     誰もが向き合う人生最後の決断を胸に、白鳥は飛び立てるのか。勇気や愛に後押しされ、人は人生を歩み続ける。

     実在したパトリック・ピッツェンバーガーを演じるのは映画界の至宝、ウド・キアー。

    ©2021 Swan Song Film LLC

     「スワンソング」。白鳥がこの世を去る際に、最も美しい声で歌うとされる逸話からうまれた言葉。

     アートや技術に身を捧げた者たちが、人生最後に残した作品やパフォーマンス……つまり有終の美を「スワンソング」と表現する。老人ホームを飛び出し、今の町を生きる人、過去にパットにヘアメイクされた人たちとの交流により、徐々に過去と自分に向き合う覚悟を決めるパット。そして、上下スウェットだった時は普通のおじいさんだったが、ピンクのハットをかぶり、ライトグリーンのコートを着てから本来のゲイであった自分の所作に変化していくウド・キアーの演技は圧巻。

     人は命が続く限り、新たな発見と出会いを繰り返し、希望を見いだすことができることを教えてくれる。
     読者には素晴らしい技術を持った方々が多い。いつか来るその時のために自身のスワンソングを今のうちに考えておくのも前向きに生きるコツなのかもしれない……。

     って3ヵ月連続で高齢者の映画かよ!

    スワンソング
    監督:トッド・スティーブンス 
    カルチュア・パブリッシャーズ配給
    8 月26 日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国ロードショー

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