JOURNAL 

    トヨタ自動車 サービス技術部 BPサービス推進室長 湯原英邦氏

    環境変化に合わせニーズや時代に合ったサービスを開発し市場へ届ける

    • #インタビュー

    2021/03/15

    今年1月、トヨタ自動車サービス技術部BPサービス推進室長に湯原英邦氏が就任した。2003年に入社し、国内サービス部(当時)に配属。2018年にBPサービス室に配属された。コロナ禍という世界的に厳しい状況下においての振り返りと、大きく変わりゆく環境変化にどう対応をしていくのか。就任の抱負と併せて聞いた。

    トヨタ自動車 サービス技術部 BPサービス推進室長 湯原英邦氏

    ー 就任の抱負を

     当社が掲げる3S精神( 正確・親切・信頼)を引き続き実践するための情報と商品の提供をしていく。BPの業界においては正しい修理情報をタイムリーに届けることが必須と考える。加えて、コロナ禍に限らず環境変化が激しい時代にあって、これまでの取り組みだけでは足りない部分も出てくる。それを素早くお客様のニーズや時代にあったサービスを開発しながら市場に届けるようにしていきたい。

    ー 今年度はBPサービス推進室にとってどのような1年だったか

     新型コロナウイルスの感染拡大により、日本全体が行動を制限され、自由な移動ができなくなることは困難だと感じた。言い換えると、自由に行動ができる喜びを再認識させられた。改めて、自動車業界に携わる人間として、お客様の幸せと行動の喜びを提供することが使命だと考えさせられた1年だった。
     また、移動自粛の影響で交通事故件数が減っており、それは大変喜ばしいことではあるが、ビジネス面で考えるとBP業界全体で厳しい一年だった。今後も安全装置の普及により事故は減少していくが、それ以上にこのたびのコロナ禍などの不測の事態に備えて動けるような準備が必要だと考えている。

    ー 20年12月から系列ディーラーへの展開を目指すとしていたAI技術応用の見積ソフトEspart Proはどのような状況にあるのか

     予定通り昨年12月に全国の系列販売会社に案内をした。正確な数は把握していないが、多くの販売会社でトライアルもしくは本格運用が始まっていると聞いている。
     すでに要望も複数いただいており、優先順位をつけてシステム改修・機能強化を図ることで、より良いものにして行きたい。

    ー 昨年12月に発表された水性塗料乾燥機carworkのディーラーの反応は

     従業員の健康面と環境保護の観点から導入を推進している水性塗料だが、現場からは乾燥時間の長さが懸念されており、大幅に時間短縮できることから反響は大きい。ディーラー内製工場においては設備の老朽化が進んでおり、建て替えを検討する上で同製品の導入も視野に入れている企業も少なくない。今後、水性塗料の普及が進むにつれてニーズは一層高まると思っている。

    ー BP業界においての女性の活躍を提供することに尽力しているが、今後の方針は

     女性だけでなく高齢者や外国人の方々などにも働いていただける多様性のある職場作りが課題となる。特にBPの現場は3K(きつい・汚い・危険)というイメージを払拭できる職場環境を整えていかなくてはいけない。
     水性塗料導入もその一環である。今後は重量部品の取り外しなどを女性や高齢者でも1人でできるようになるサポートツールの研究を進め、将来的には作業ロボットの開発にも挑戦していきたい。

    ネッツトヨタ富山に導入されている水性塗料乾燥機carwork

    ー 今後、車両のEVシフトが急速に進んでいくと予想されるが、BP部門としての対応策は

     業界全体としてEVにシフトをしていくだろうが、BP部門としてはEVならではの修理情報など含めてその動向を慎重に見極めていきたい。新技術への対応という意味では、需要の高まりつつあるアルミや樹脂の修理方法などを後追いにならずにタイムリーに提供していく。

    ー 特定整備認証制度がスタートしたが、先進安全装置に対する整備・点検などの指導、啓蒙について

     特定整備に限ったことではないが、法規制は順守していく。4月1日から溶接ヒュームが特定化学物質に指定されるが、メーカーからディーラーに対して適切な情報を提供できるようにしていきたい。
     しかし、法令順守は徹底するが、具体的な対処法に関してはメーカーから強制することはないと思われるので、その点は各ディーラーの判断にお任せしたい。

    ー 昨年、国が2050年を目標にCO2ゼロ社会の実現を目指す声明を発した。BPサービス室として温暖化防止貢献策は

     CO2ゼロ社会などはSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みが根本にある。企業としてすべての活動はどこに貢献できているのかを考えて業務に努めていきたい。たとえばそれまで交換だったプラスチックを修理に出すことや、リサイクルを徹底するなど、小さいことから始めていきたい。また、企業としても持続可能な社会の実現に貢献するために、「トヨタ環境チャレンジ2050」という行動目標を定めている。
     そこでは新車CO2ゼロチャレンジ、工場CO2ゼロチャレンジなど6つのチャレンジの実現に向けた取り組みを発表している。

    ー コロナ収束が前提となるが、新年度の重点とする取り組みは

     重複するがまずは3S精神を徹底させること。また、世の中の働き方はこの1年で大きく変わった。それに合わせBPも多様性のある働き方、生産性の高い働き方となる方法を探っていく。
     企業として大事なことは、現場で働く人間が困っていることをいち早く解決してあげることだと考えている。それがより良い職場環境作りになることを忘れないようにしたい。

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