JOURNAL 最新ニュース
車体整備事業者の利益を守れ 公取委がディーラー160社を一斉指導
2025/12/22
公正取引委員会と中小企業庁は22日、自動車ディーラーによる下請法違反被疑行為に対し、2件の勧告と160件の指導を行ったと発表した 。今回の集中調査では、損害保険会社との「協定」を隠れ蓑にした、車体整備事業者の利益を削る不当な商慣習に厳しいメスが入った 。
「保険待ち」の未記載・支払遅延を否定
現場で常態化している「保険会社の査定(協定)が終わるまで代金が決まらない」という理由での書面不備や支払遅延に対し、公取委は明確に「違反」との判断を下した 。
- 発注時の義務: 修理着手時に金額が確定しない場合でも、具体的な金額を導き出す「算定方法(レバーレート×指数など)」を記載した書面の交付が義務付けられた 。
- 60日ルールの徹底: 協定が難航していても、車両の引き渡し(給付の受領)から60日以内に代金の全額を支払わなければならない 。
- ディーラーの責任: 請求書の提出遅れを理由にした支払い遅延も認められず、ディーラー自らが保険会社と交渉するなど、整備事業者に負担を押し付けない配慮が求められている 。
利益を削る「中抜き」と「据え置き」を是正
整備事業者が保険会社と粘り強く交渉して勝ち取った工賃を、ディーラーが一方的に搾取する行為も厳しく制限される 。
- 一方的な利益差し引き: 協定後の修理代金から、ディーラーが自社利益として一定率を一律に差し引く行為は「買いたたき」に該当する恐れがある 。
- 価格転嫁の協議: コスト上昇局面で、下請側から申し出がないことを理由に価格を据え置くことは許されず、十分な協議を行うよう指導がなされた 。
「無償代車」「無料レッカー」は不当な利益提供
整備事業者が「仕事をもらっている立場」から断りにくい、付帯作業の無償化についても改善が命じられた 。
- 代車の無償提供: ディーラーの顧客向けの代車を整備事業者に用意させ、その費用を負担させない行為について、スズキ自販大分と福岡ダイハツ販売に勧告が行われた 。
- 引き取り・納車: 発注書に記載のない車両の引き取り、部品の運搬、不要部品の廃棄などを無償で行わせることは、整備事業者の利益を不当に害する行為にあたる 。
令和8年「取適法」施行でさらに監視強化
来年1月からは改正下請法(取適法)が施行され、事業所管省庁による監視がさらに強化される 。公取委は、整備事業者が泣き寝入りすることのないよう、違反行為に対して迅速かつ厳正に対応する姿勢を鮮明にしている 。