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[連載]みんながわかる! OBD検査

第5回 OBD検査の対象車両はどう見分ける?

  • #その他

2025/08/08

■ OBD検査の対象車両の基準日は?

 昨年10月から始まったOBD検査ですが、すでに半年以上が経過した現在でも、「まだOBD検査の対象車はほとんど入庫していない」という事業者が多いのではないでしょうか。今回は、OBD検査の対象車両の見分け方について解説するとともに、今後の対象車の入庫台数の増加ペースについても予測します。対象車についてはOBD検査ポータルサイトには下記のように記載されています。

● 国産車:令和3(2021)年10月1日以降の新型車 (フルモデルチェンジ車)

● 輸入車:令和4(2022)年10月1日以降の新型車 (フルモデルチェンジ車)

 しかし、ここでいう「新型車」の基準日については明確な定義は示されていません。一方、国交省が公表している説明資料では、型式指定日が基準であることが明記されています。さらに、OBD検査の適用開始日は以下の通り定められています。

● 国産車:2024年10月1日以降

● 輸入車:2025年10月1日以降

 加えて、「型式指定日から2年以上が経過していること」も適用条件となります。

■ 型式指定日・発売日・OBD検査開始日の関係性


 新型車は、一般的に型式指定から約1.5~2ヵ月後に発売されます。この傾向で公表されているOBD検査開始日を基に、非公表の型式指定日を推定し、発売日との関係性を整理しました(表1)。

 たとえば、対象車両一覧表の先頭にある三菱アウトランダーPHEVは2021年12月16日に発売されました。これを基に、型式指定は約2ヵ月前、すなわち2021年10月ごろと推定でき、「2021年10月1日以降の新型車」という対象条件と一致します。この場合、もう一つの条件である「型式指定日から2年以上経過」よりも、「2024年10月1日以降」という一律の開始日の方が先に満たされるため、OBD検査の開始日は2024年10月1日となります。その後、型式指定日が2022年9月ごろと推定されるレクサスRXまでの新型車は、OBD検査の開始日が一律に2024年10月1日となります。しかし、スズキ・ソリオのように型式指定が2022年10月以降の車種では、「型式指定日から2年以上経過した日」が優先され、たとえばソリオの場合は2024年10月14日がOBD検査開始日になります。つまり、ソリオ以降の新型車では、車種ごとに異なるOBD検査開始日が設定されるようになります。

■ 車検証の「OBD検査対象」表記だけで判断していいの?


 OBD検査開始日は型式指定日の2年後とされているため大型車やバス、タクシーなど初回車検が1年の車両は、OBD検査開始日より前に車検満了日を迎えることがあります。たとえば、三菱ふそうSUPERGREATは2023年10月25日に発売されており、同年12月に登録された場合、初回車検は1年後の2024年12月です。

図1 車検証のOBD検査対象車の記載とOBD検査の適用の関係


図1 車検証のOBD検査対象車の記載とOBD検査の適用の関係


 この車両のOBD検査開始日である2025年10月20日以前に車検を実施する場合は、車検証にOBD検査対象車と記載があってもOBD検査の対象外です。同じSUPER GREATでも、2024年11月登録なら、初回車検は2025年11月なのでOBD検査の対象になります。「車検満了日がOBD検査開始日以前の車両なのに、なぜ車検証に『OBD検査対象』と記載されているのか?」と疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。これは、電子車検証の導入によって継続検査時には車検証を再発行せず、車検有効期間のデータのみが更新される仕組みになったからです。たとえ初回車検時には対象外であっても、2回目の車検では確実にOBD検査の対象となるため、車検証に『OBD検査対象』と記載されているのです。


■ 実務上の判断方法は?


 車検証の記載と実際の初回車検のOBD検査の適用の関係は図1のようになります。AのOBD検査の対象車は車検証記載の楕円の中に含まれますので、記載なしの場合は確実に対象外と言えます。図のAの外側のBの薄い網掛けの部分は車検証の記載があるにもかかわらず対象外であることを表し、OBD検査開始日より前に車検満了日が到来した場合が該当します。

 実務では、車検証に記載があっても対象車両一覧表でOBD検査開始日を確認しなければいけないのは大変です。そこで特定DTCアプリの「検査要否確認」機能を使用することにより機構サーバーが自動的に該当車種のOBD検査開始日を確認し、対象かどうかを判断してくれます。


■ OBD検査の実施状況


 国交省のデータによるとOBD検査開始から2025年2月23日までの検査実績は83,606台(うち指定工場:67,842台)であり、まだ非常に少ないのが現状です。当初段階で意外に少ない原因は、型式指定から実際の登録までに少なくとも3ヵ月程度のタイムラグがあるのが影響していると考えられます。

 この数字からも「OBD検査対象車の入庫はまだ少ない」という現場の実感が裏付けられています。しかし、今後はタイムラグが解消されるにつれて、ゆっくりと対象車の入庫が増加していく見込みです。


■ 今後の対象車両数の増加予測


 国交省によれば、2021年10月~2023年9月の2年間のOBD検査対象車両は約130万台です。年間の継続検査対象台数が約3,200万台ですから、制度開始から最初の2年間の平均では約2%と、非常に少ない割合です。2025年1月末時点では対象車両数が382万台に増加しており、ペースは上がっているものの、継続車検全体に占める割合は、まだ少なく、2025年の入庫台数に占める対象車両の割合は、1%台前半と推計されます。


■ 今回の疑問に対する回答


 「車検証にOBD検査対象と記載がなければ対象外だが、記載があっても1年車検の車種は例外的に対象外のケースがある」となります。実務では、特定DTCアプリの「検査要否確認」機能を使えば自動的に判定できるため、問題ありません。

 今回は対象車両について、徹底的にこだわって調査してみました。今後、本誌と連動して企画中のOBD検査に関するオンラインセミナーでは、図を用いながらこの関係性をより分かりやすく解説する予定です。ぜひご期待ください。

(つづき)


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筆者プロフィール

著者 佐野和昭氏

佐野和昭
 東北大学 工学部卒業後、トヨタ自動車へ入社。アフターサービス部門に配属され、品質管理からサービス企画・改善、部品のマーケティングまで幅広い分野を担当。その後、自研センターの取締役に就任。新しいアルミ修理技法などの修理技術開発を担当し、機械・工具メーカーなどと意見を交わした。現在は、車体整備をはじめとした整備関連業界において複数社の顧問を務めると同時に、セミナー講師やコンサルタントとしても活躍中。