JOURNAL 

シネマエンドレス「ウォーフェア 戦地最前線」

  • #一般向け

2026/02/03

95分間、戦場に閉じ込められる圧倒的没入体験

 2006年、イラク。アメリカ海軍の特殊部隊“シールズ” の小隊8名は、イラク中央部に位置する危険地帯ラマディにある民家を占拠する。彼らの目的は明日、地上部隊がこの地域を安全に通過できるように、アルカイダ幹部の動きを監視すること。ある時、監視している敵兵が不審な動きを見せる。その瞬間、大きな爆発音が部屋に鳴り響く。先制攻撃を受けた部隊は脱出を試みるが、建物と周辺一帯は完全に包囲されている。叫び声と負傷者の苦悶に満ちた声が続く中、指揮系統は完全に混乱。怒号と悲鳴が飛び交う逃げ場のないウォーフェア(=戦闘)で、彼らは“あるプラン” を立て、脱出を試みる。

 「シビル・ウォー アメリカ最後の日」で臨場感のある戦闘を描いて話題となったアレックス・ガーランドが、元特殊部隊隊員のレイ・メンドーサとともにイラク戦争の実体験を極限まで再現し、戦争そのものをスクリーンに出現させる。観る者の全神経を震撼させる熾烈な95分。


©2025 Real Time Situation LLC. All Rights Reserved.

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サブカルおじさんの推しどころ

 A24作品。2004年に世界中で大ヒットしたハウスの名曲・ERIC PRYDZの「Call on Me」のMVを楽しむ特殊部隊隊員たち。それが本作に出てくる最後の笑顔である。それ以降、観客は彼ら隊員とともにイラク戦争のただ中に放り出される。ストーリーらしいストーリーはなく、実際にあったイラク戦争中の一つの戦場を極限まで克明に描写した、驚異的な戦争映画である。登場する隊員はすべて実在の人物をモチーフにしており、その人物たちの記憶を忠実に再現、そこにはドラマチックな脚色や絶対に弾が当たらないヒーローも存在しない。そのため予定調和がなく、いつ、どこで何が起きるのか分からない、そしてカットを割らない長回しによる極度の緊張感を強いられることになる。臨場感あふれる銃声と悲鳴、爆発音、戦闘機による威嚇飛行。普段、我々がTVで眺めている他国の戦争は記号や文字ではなく、実際に起きていることだと強く認識させられる戦争映画の一つの到達点だろう。


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監督・脚本:アレックス・ガーランド、レイ・メンドーサ/配給:ハピネットファントム・スタジオ/1月16日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開



担当記者


青山 竜(あおやま りゅう)

東京編集課所属。映画・音楽・芸術あらゆる文化に中途半端に手を出し、ついたあだ名は「サブカルくそおじさん」。先日、温泉に行った。石階段を登った先にある露天風呂で、冬の空気を感じながらつかる幸せよ。風呂から上がり、普段よりも多めの白い息を吐きながら石階段を下る。ふと空を見上げ「彗星かな? いや違う、違うな。彗星はもっと、バァーって動くもんな」とひとりごちた瞬間、温泉の成分でぬるった階段を踏み外す。感覚がスローモーションになり、肘や尻を階段に叩きつけながら階段を下る。人はなんと無力か。滑り落ちるたびに自身の股間がプルプルと躍動するのを見ることしかできないのである。滑り落ち続ける人生だからこそ、2026年は「上を見るだけでなく足元も見よう」ということなのだろう。


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