JOURNAL 

パドックイレブン、塗装材料費算出システムを開発

車体整備業界の透明性確保に向けた提案

  • #トピックス

2025/09/01

 山形県米沢市で自動車整備及び鈑金塗装事業を展開するパドックイレブン(山田政弘社長)。同社は、塗装材料費を算出するシステムを自社開発し、見積書の作成及び請求根拠の見える化に活用している。

開発の経緯

 鈑金塗装の塗装材料費は、塗装工賃に一定の材料費率を乗じて算出するケースが多い。しかし、近年塗料価格の上昇が続いていることから、山田社長は従来の算出方法で適正な価格が請求できているのかについて疑問を感じていた。

 そこで、自社で使用している塗料や副資材など材料の仕入れ価格、各作業ごとの使用資材と使用量を徹底的に調査。車種(車格)や作業内容ごとに材料の使用量、乾燥時の光熱費などを算出し、塗装材料費を計上する仕組みを開発。昨年11月の入庫車両から同システムで塗装材料費を算出しているが、損害保険会社との協定において塗装材料費に関する指摘を受けたことはないという。

システムの提供を開始

 同社は、塗料販売店を通じて同材料費算出システムを販売している。

 システムを導入するためには、まず自社で使用している塗料や副資材などの仕入れ値、塗装乾燥時の光熱費などを調査した上で、各材料の販売価格を設定する。そして、作業部位(パネル)ごとに、修理・交換それぞれの場合における使用材料の組み合わせと使用量をマスターに入力する。これらのマスターデータを基に車格などに応じた係数を乗じることで、材料費を算出することができる。同システムの導入においては、これら事前準備が非常に重要となるため、「塗料・材料の仕入れ価格の確認や各製品の値上がりへの対応など、鈑金塗装工場単独では運用が難しいケースも多い。そこで、工場への直販ではなく導入及び運用をサポートしてくれる塗料販売店を経由して販売することにした」。

 また、上塗りの塗料代については、事前見積りの段階で作業者が配合する各塗料の使用量、塗装ブースの予想稼働時間を算出し、見積り作成担当者に提出する必要がある。「当社システムを導入するためには、現場技術者の協力が不可欠。当社でも導入に当たって、現場との調整に時間を要した」。一方、システムの運用を開始すると、現場が事前に塗装工程を考えるようになるため、業務効率化にもつながっているという。

車体整備事業の透明性確保に向けて

 同システムは各材料の実際の使用量に応じた費用を算出するものであるため、導入によって塗装材料費の請求金額が上昇するかどうかは、各工場の現在の請求状況による。しかし、山田社長は「重要なのは、原価を割る心配がなくなることだ」と、導入による効果を示す。

 また、国土交通省が3月に公表した価格交渉に関する指針を受けて、「当社システムを使用するかどうかではなく、業界全体で請求金額の根拠をしっかりと示すことが求められている」と、業界全体で透明性確保に向けて取り組むことが重要であると強調する。

 同社では同指針を受けて、同一事業場内における恣意的な工賃単価の格差を是正することを目的として、車体整備の工賃単価を変更するとともに一般カーオーナー向けの説明資料を作成・配布した。また、カーオーナーに対する透明性確保に向けた取り組みとして、「修理見積り依頼書」、「修理作業依頼書」、「(契約保険会社に対する)見積書送付の承諾書」、「修理費協定額報告書」を作成し、今年6月から使用している。

 「透明性確保を目的として、作業中の確認項目や写真撮影のポイントなどをまとめたチェックシートも作成した。現場技術者の理解を得た上で、今後このチェックシートの運用も開始したい」。 車体整備事業の透明性確保に向けて各種施策を展開するとともに、それらの情報を発信することで、業界全体の発展に貢献する考えである。


山田政弘社長