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自動車技術総合機構、ロービーム計測による前照灯検査の実施状況を公表
2026/02/05
―― 意匠権と部品廃止の影で泣くユーザー
自動車技術総合機構(NALTEC)が公表した最新データによれば、令和7年12月時点でのロービーム計測の全国平均合格率は96%に達している 。数字だけを見れば「概ね良好」と映るかもしれないが、この裏側には、現行の交通法規との乖離や、検査を諦め廃車に至った旧型車ユーザーがどれほど存在したのかまでは触れられていない。
制度の「ねじれ」:原則ハイビーム、検査はロー
まず指摘すべきは、法令運用の矛盾だ。警察庁やメーカーは「原則ハイビーム」やオートライトの義務化を推し進め、走行の実態に即した安全確保を求めている。しかし、検査制度の現場では「ロービーム(すれ違い用前照灯)」での基準適合が強く求められている 。
原則ハイビームが改めて周知されるなかで、検査だけが逆行するかのようにロービームでの合格を絶対視する現状は、現場のドライバーにとって「二重基準」とも取れる。特に光量不足に悩む車両にとって、ハイビームなら安全基準を満たせるにもかかわらず、ロービームの数値のみで「不適合」とされる不条理は拭えない。
「意匠権」が阻む延命の道
さらに深刻なのは、製造から時間の経過した車両、いわゆる「旧車」への配慮不足だ。平成10年9月1日以降に製作された車両がこの検査対象となるが 、多くのユーザーが直面しているのは、単なる整備不良ではなく「部品の欠乏」である。
ヘッドライトユニットはメーカーが意匠登録で特許を握っており、社外品(サードパーティ)による供給が難しい。その一方で、灯火類は比較的製造廃止が遅い部品ではあるものの、それでもカーメーカーがヘッドライトを「製造廃止」してしまうと対応の難度が一気に高まる。
- 部品が手に入らない: レンズの曇りや内部の反射板(リフレクター)の劣化により、ロービームの光度が足りなくなる。
- 修理の選択肢がない: メーカーが製造を打ち切れば、ユーザーは中古品を探すか、車検を諦めるしかない。
長く乗り続けたいカーオーナーに向けた施策を
「適切な整備・調整」を求めるのであれば、それを可能にするためのインフラ整備も重要ではないか 。NALTECが合格割合を公表し、適正な整備を促すのであれば、同時に議論すべき事柄があるずだ。
- 重要保安部品の長期にわたる供給義務: 安全に関わる灯火類については、意匠権を主張する以上、製造廃止後、平均使用年数以上の供給を継続させる
- 部品価格の適正化: 部品代の上昇を消費者物価指数以下に抑えるなど、ユーザーの維持コストを不当に吊り上げない制約。同時にディーラーに対してのみ部品を3割引きで卸している制度を廃止させ、流通による極端な収益差を是正する
- 意匠権の開放: カーメーカーが自社で供給できないのであれば、製造廃止と同時に意匠権を開放し、サードパーティへの意匠権利用を認め、市場での代替品供給を促すべきではないか
車検制度の厳格化が、単なる「古い車の排除(買い替え促進)」の道具になってはならない。日本の誇る「自動車文化」を守るためには、検査機関の呼びかけだけでなく、カーメーカーの供給責任を問う法的整備が急務である。