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BSR誌面連動企画『磨きの匠』 FILE#12 バレット・酒井亮輔

磨きに求められるのは 「なぜその工程を選んだか」という判断力

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2026/02/13

PROFILE

酒井 亮輔(さかい・りょうすけ)
バレット

経験年数  20年以上

主な経歴  自動車整備専門学校卒業後、コーティング業界へ。toB分野での年間1万台以上のコーティング施工に携わり、量産現場における工程設計、施工条件の標準化、品質安定化を実践。また、toC分野では車両状態や塗装特性に応じた下地処理・仕上げ技術を追求してきた。これら量産施工と個別施工の両極端な現場で培った知見を基に、「施工者目線」を最優先とした商品開発を行っている。

座右の銘  千里の道も一歩から

――磨き作業で意識すべきポイントや考え方について

磨き作業において研磨=工程を細分化することは大前提として、初期工程の研磨密度と完成度を高めることが、時短と仕上がりを両立させる鍵となる。使用したオービットダイヤ32mmのハイパワートルク・コードレスデュアルアクションはその部分を大幅にカバーできる。重要なのは押圧による切削ではなく、大径オービットによる仕事量を最大限活かす意識であり、過度な加圧は回転低下や研磨熱でのスクラッチの乱れを招く要因となる。

 今回の研磨の考え方としては、初期工程時に、ポリッシャーが通っただけで仕上げレベルまでダメージを均一化する「スクラッチマネジメント」が重要となる。32mmオービットと高トルクの組み合わせは、大〜軽度ダメージをバフ、コンパウンドの組み合わせにより一工程で平均化しやすく、中間工程を省略できる下地作りに適している。

 また、パッドは常にパネルに対してフラットに当て、無駄な角度変化を抑えることで研磨効率と仕上がりの安定性が向上する。ストロークスピードを意図的に落とし、重なり幅を確保することで研磨密度が高まり、1工程で完結できるレベルまで仕上げることが可能となる。工程削減とは削る量を増やすことではなく、判断と手戻りを減らすための研磨思想である。

――次世代を担う若手技術者にメッセージを

研磨技術は、経験年数で成立する時代ではなくなっている。オービット32mmのハイパワートルク・デュアルアクションが示すように、これからの磨きに求められるのは、「なぜその工程を選んだか」という判断力だ。工程を減らすことは決して手抜きではなく、塗装状態を見極め、必要充分な研磨で仕上げる技術者としての成熟を意味する。

 若手技術者に求めたいのは、作業手順をまねすることではなく、研磨メカニズムを理解し、自分の手と機械が何をしているかを常に考える姿勢と力をつけていってほしい。

【作業実演】

輸入車の硬いクリヤーの磨き傷(オーロラマーク)、ペーパー傷の研磨作業

輸入車のかなり硬いクリヤーに発生したオーロラマーク及びペーパー傷に対し、ポリッシャーはコードレスデュアルアクションのみで研磨する。