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[連載]事例と解説ー整備業のための補助金活用講座
第4回 事例:EVの販売と整備、 非対面型車検サービス
2025/07/29
今回も、自動車販売・整備を行うA社が、新分野展開に挑戦した事業再構築の事例をご紹介します。
A社は北関東エリアで自動車販売、整備、鈑金塗装、保険代理業を展開する地域密着型企業で、創業から30年以上、地域に根ざした経営を続けてきました。
ベテラン整備士による高品質な整備、車両販売における柔軟な提案力、アフターフォローを含むワンストップサービスなどを強みに安定成長を遂げてきましたが、コロナ禍による来店客減少や半導体不足による新車納期の遅延が響き、主力の車販事業は大きな打撃を受けました。また、整備工程の非効率さや若年層へのアプローチの弱さも課題となっていました。
自社分析では、高い整備技術やホスピタリティ、広い顧客層といった強みがある一方で、営業力・集客力不足やEVなど次世代車両への設備対応が遅れている点が弱みとして浮上。
外部環境の変化としては、EVの普及加速や非対面サービスの需要増を機会ととらえ、これらにいち早く対応することが、競争力確保の鍵と判断しました。
そこでA社は事業再構築補助金(今年度からは新事業進出促進補助金へ改名)を活用し、EVの展示販売と整備、そして非対面型車検サービスを主軸とした新分野展開に挑戦することになりました。
既存店舗を改修し、EV対応リフトやスキャンツールなどの専用機器を導入。非対面車検では、整備状況をリアルタイムで顧客と共有できるITシステムを活用し、作業の透明化と業務効率化を図りました。これにより、安心・納得感のある整備体験を提供し、若年層や新規顧客の取り込みを強化しました。
また、EVの販売については、店舗の20坪増築と内装リニューアルを行い、商談スペースやキッズスペースの設置、感染症対策設備の導入も行いました。来店しやすい雰囲気づくりによりファミリー層の取り込みを図ります。販売では補助金制度やエコカー減税などの情報提供を行い、EVの購入ハードルを下げる工夫もしています。
販促面では、チラシやDMに加えて、自 社 HPの 新設、SNSやLINEを活用した若年層向けのデジタルマーケティングを強化。DMは既存の顧客リストを活用し、地域に根ざしたアプローチを展開しています。
この事業には約 1億円を投資し、内訳は、建物改修、機材・システム導入、販促費用等となります。EVは初年度約 10台、3年目には約 50台の販売を計画し、新事業が売上の10%以上を占める構成を目指します。将来的にはEV整備の受託や他社との協業も視野に関係強化を進めています。
A社の挑戦は、EV対応と非対面化という2つの変革を同時に実現するものであり、整備業界が直面する課題に対し、具体的な一手を示す好例です。地域経済や環境貢献を見据えた本取り組みは、地域整備事業者の新たな方向性を提示していると言えます。郊外ではまだ競合が少ないEV整備に早期参入することで、地域のニーズに応えつつ、脱炭素社会に貢献する企業としての立ち位置も確立していく計画です。
次回も自動車アフター業界の事業者の次の一手をご紹介します。
筆者プロフィール
![[連載]事例と解説ー整備業のための補助金活用講座~第4回](https://images.microcms-assets.io/assets/d2e4fe1647df4cbaa78dfa610b1ed1a4/495b993d4801428c90c342862ad93c9d/subsidy_01.webp)
山田健一(株式会社フォーバル)
国内大手EC会社にてマーケティングを担当。その後、大手M&Aアドバイザリー会社にて上場企業の経営戦略立案やM&Aアドバイザーとして数多くのM&Aを実行支援。2016年に(株)フォーバルの事業承継支援事業立ち上げに参画。自動車アフターマーケットでの後継者問題の解決、補助金支援に力を入れている。
株式会社フォーバル https://forval-shoukei.jp/