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ジャパントラックショー2026 タイヤメーカー特集

  • #イベント

2026/05/14

 5月14~16日の3日間、パシフィコ横浜で開催されるジャパントラックショー2026。ここでは、タイヤメーカーに関する出展内容を速報で紹介する。


ダンロップタイヤ(住友ゴム工業)


 単なるタイヤの提供に留まらない、総合的な運行サポートのビジョンを提示した。今回の展示ブースでは、タイヤ、メンテナンス、そして先進的な管理システムを統合したトータルパッケージを「エコスマートプラン(ESP)」として具体的に紹介。その根底にあるのは、運送会社の価値を最大化するための「運行を止めない」という一貫したテーマである。



より具体的に、より進化したエコスマートプラン


 今回の展示コンセプトは、タイヤだけでなく、メンテナンスやそれに付随するシステム、TPMS(タイヤ空気圧監視システム)を含めたトータルパッケージの提案にある。前回のトラックショーでは将来的な構想の提示に留まっていたが、今回はより進化した「エコスマートプラン」として、顧客に提供できる具体的な価値を前面に押し出した形だ。


 特に近年、安全サポート環境の技術は大きく進歩している。2年ほど前からコンセプトが示されていたナットの緩みを検知する「センシングコア」技術はいすゞの大型トラック「ギガ」に新車装着(OE)されるなど、着実に具現化が進んでいる。リプレイス(交換)市場への展開はまだ道半ばとしつつも、ダンロップが顧客に提供したい未来の価値を示す重要な要素となっている。


運行を止めないための商品とTPMS


 ブースで最も強調されていたのは「運行を止めない」という価値提供だ。そのため、商品の紹介においても燃費性能より、現場の作業効率化や省メンテナンス、稼働時間の最大化に特化した内容が中心となった。点検の頻度を下げることで、車両が稼働できる時間を伸ばすという直接的なアプローチである。


 その中核を担うのがTPMSだ。このシステムは、タイヤの空気圧が低下すると自動で運行管理者やドライバーに通知する。これにより、トラブルを未然に防ぎ、事故による運行停止のリスクを大幅に低減する。さらに、空気圧データをウェブ上でリアルタイムに把握できるため、毎日の運行前点検にかかるドライバーの負荷を軽減するという大きなメリットももたらす。


人材不足を解消するフルメンテナンスとデジタル管理


 現代の運送業界やタイヤ販売店が直面する深刻な人材不足という課題に対し、ダンロップは「フルメンテナンス」という解決策を提示する。これは、運送会社が行う定期的な点検作業をダンロップがすべて代行するというプランだ。脱輪事故などを防ぐため、専門の器具を用いてナットを丁寧に磨くなど、質の高いメンテナンス作業が提供される。


 さらに、点検作業の効率化と透明化を実現するのが「車両点検管理システム」である。デジタルデプスゲージで計測したタイヤの残溝データは、自動的に携帯端末に転送され、点検結果報告書として出力される。これにより、手作業での計測、記録、入力といった手間が省かれ、タイヤ販売店の作業負荷が軽減される。運送会社側にとっても、いつ、どのような点検が行われたかがシステム上に正確に保存されるため、車両管理の信頼性が向上する。


「キャッシュフローを安定させる月額制モデル」


 これら商品、TPMS、フルメンテナンス、管理システムを一つにまとめた「エコスマートプラン」は、月額制のサブスクリプションに近いビジネスモデルを採用している。顧客はタイヤを購入する際に一度に大きな費用を支払う必要がなく、毎月一定額を支払う契約となる。


 例えば、顧客の使用状況から3年間で20本のタイヤを使用すると予測された場合、その費用を含めたサービス全体の料金が月々の支払いに分割される。これにより、運送会社のキャッシュフローは安定し、計画的な経営が可能となる。これは、顧客の事業継続性を財務面からも支えるという、ダンロップの強い意志の表れと言えるだろう。


 ダンロップの取り組みは、タイヤメーカーが単なる製品供給者から、顧客の事業全体を支えるソリューションプロバイダーへと進化していく未来を明確に示している。テクノロジーを駆使して「運行を止めない」という究極の価値を追求する彼らの挑戦は、物流業界全体の持続可能性を高める上でも重要な一歩となるに違いない。


トーヨータイヤ


 2024年から掲げる「お客様とともに作る、ともに思う、ともに走る」というコンセプトを継承しつつ、より顧客目線に立ったアプローチを強化したブースが展開されている。単なる商品展示に留まらず、安全啓発やアフターサービスに関連する講習、多彩なトークセッションといった体験型コンテンツを拡充。顧客との対話を通じて課題解決を目指すソリューションパートナーとしての姿勢を鮮明に打ち出した。


お客様の目線に沿った安全啓発や商品を


 今回のブースコンセプトの核となるのは、顧客視点に立った安全啓発とアフターサービスの重視である。レイアウトは前回から大きくは変えず、大型トラックと小型トラックをそれぞれ配置する構成を基本としている。しかし、その中身は顧客との接点を増やす方向へとシフトした。


 前回展示されていた中型トラックを1台減らし、そのスペースを活用して新たに「安全啓発コーナー」を設置。リトレッドタイヤの展示や、トラッククレーンのユニット展示なども加え、来場者が具体的な利用シーンや課題解決策をイメージしやすい構成となっている。これは、単に製品を並べるだけでなく、顧客が抱える課題に寄り添うという姿勢の表れだ。


 展示の主役となるのは、大型車向けと小型車向け、それぞれの新商品タイヤである。大型トラックには、今月発売されたばかりの新商品「M630」を装着。このタイヤは、泊まり込みでの開発が行われたという背景を持つ製品であり、その性能をアピールするために大型の展示スペースが確保された。


 一方の小型トラックには、9月に発売を控える新商品「M635」が装着されている。それぞれのタイヤが持つイメージに合致する車両をいすゞ自動車から借り受けることで、製品と車両が一体となった世界観を構築。来場者に対して、新商品がもたらす価値をより明確に伝えることを意図している。



 ブース内のステージでは、3日間にわたり多彩なトークセッションが繰り広げられる。前回のようなインフルエンサーの起用はなく、より専門的で多角的なテーマ設定が今回の特徴と言える。コンテンツは大きく4つのテーマで構成されている。


 まず、モータージャーナリストの竹岡圭氏によるセッション。次に、経営視点から物流を語るセッションでは、業界のトップランナーが日替わりで登壇する。さらに、新商品「M630」の開発担当者による解説や、環境負荷軽減の観点からリトレッドタイヤを深掘りするセッションも毎日実施される。加えて、現場のリアルな声を届ける試みとして、プロドライバーへのインタビュー動画も上映されるなど、充実した内容となっていた。


日本ミシュランタイヤ


 ミシュランは、近い将来の日本市場導入を目指す開発中の大型トラック用タイヤを参考展示し、同社が推進するサステナブルなタイヤ開発の方向性を示した。その根底にあるのは、単なる製品性能に留まらない「More than Tire(タイヤ以上の価値)」という哲学である。タイヤのライフサイクル全体を通じて環境負荷を低減し、ユーザーに経済的メリットをもたらす「マルチライフ」というコンセプトを軸に、同社の取り組みは新たなステージへと向かっている。


「タイヤ以上の価値」を追求するミシュランの哲学


 ミシュランのタイヤ開発は、安全性や燃費性能といった個別の要素だけでなく、包括的な価値提供を目的としている。


 タイヤのライフサイクルにおける環境負荷を分析すると、その大部分は製造や廃棄段階ではなく、車両に装着されて使用されている期間に発生するCO2排出に起因するという。つまり、走行時の燃費性能こそが、環境負荷を左右する最大の要因となる。ミシュランはこの点に着目し、様々な技術を駆使して燃費性能を向上させ、環境負荷の低減と、運送事業者の最大の関心事である燃料コストの削減を両立させるタイヤを開発している。


1つのタイヤケーシングをより長く使う。それによって環境負荷を下げる


 環境負荷低減を実現するための具体的なソリューションが「マルチライフ」という考え方である。これは、1つのタイヤを可能な限り長く使い切ることで、資源の消費と廃棄物を削減しようとするアプローチであり、「ロングライフ」「リグルーブ」「リトレッド」の3つの柱で構成される。


 まず「ロングライフ」は、新品タイヤそのものの摩耗寿命を延ばすことである。次に「リグルーブ」は、摩耗して溝がなくなったタイヤに、専用の機械で再び溝を彫り込む技術を指す。これにより、タイヤの寿命をさらに延長させることが可能となる。この技術はミシュランが古くから手掛けているもので、特別なスキルは必要とせず、適切なトレーニングを受ければ誰でも施工できるという。ただし、溝を深く彫りすぎると内部のベルトを損傷させ、タイヤが使用不能になるため、規定の深さを守るためのトレーニングは不可欠である。


 そして、リグルーブによって使い切ったタイヤは、「リトレッド(再生タイヤ)」へと移行する。これは、摩耗したトレッド(接地面)を剥がし、新しいトレッドを貼り付けて再利用する技術である。これら一連のプロセスを通じて、1つのタイヤケーシング(骨格部分)を最後まで活用し、環境負荷を最小限に抑えることができる。タイヤの寿命が延びることは、摩耗によって発生する粉塵の削減にも繋がり、多角的に環境へ貢献する。


日本のマーケットで、より環境負荷低減の取り組みをしている運送業者に提供を


 今回参考展示された開発中の大型トラック用タイヤは、まさにこの哲学を具現化したものである。展示されたのはスタッドレスタイヤとミックスタイプのタイヤの2種類。スタッドレスタイヤは、長寿命化を実現する新技術の投入をコンセプトとしている。


 一方のミックスタイプタイヤは、長持ち性能に加え、日本の燃費基準である「JH25」をクリアできるレベルの燃費性能を追求しているという。これらはまだ開発テスト段階であり、最終的な製品仕様は未定だが、環境負荷低減に積極的に取り組む日本の運送事業者に対し、具体的なソリューションを提供しようというミシュランの強い意志がうかがえる。


 タイヤは単なる消耗品ではなく、物流と経済を支え、同時に環境にも大きな影響を与える重要な要素である。ミシュランが示す「マルチライフ」というビジョンは、タイヤの価値を再定義し、持続可能な社会の実現に向けた道筋を示すものだ。製品の提供に留まらず、リグルーブやリトレッドといった技術を含めた総合的なサービスとして普及させることが、今後の運送業界全体の環境負荷を低減させていく上で重要な鍵となるだろう。