JOURNAL 

日産アリアのホワイトボディ:フロントにボルト締結を多用し修理費低減に配慮【人とくるまのテクノロジー展2023横浜】

ゲスタンプ社の「ソフトゾーン」技術を採用し側面衝突時に乗員と駆動用バッテリーを保護

  • #イベント

2023/06/23

 2023年5月24~26日にパシフィコ横浜で開催された自動車技術の展示会「人とくるまのテクノロジー展2023 YOKOHAMA」(主催:自動車技術会)では、自動車技術会構造形成技術部門委員会による「ホワイトボディ展示」が前回に続いて実施された。

 当記事ではそのうち、日産のミッドサイズSUEV・アリアのボディ構造について、設計を担当した、日産自動車 Nissan第一製品開発本部 Nissan第一製品開発部 車両・車体計画設計グループの今井裕一氏のコメントを交えながら紹介する。

日産アリアのホワイトボディ

 フロントまわりの骨格を眺めるとまず目に付くのは、フェンダーエプロン先端より前側を中心に、多くの部位がボルト締結されていることだろう。修理費低減に少なからず配慮し設計されていることがうかがえるが、「ボディサイドアウターパネルは最後にドッキングする」ことから、部位によっては生産工程の要件からもボルト締結が選択されたという。

 なお、フロントバンパービームのクラッシュボックスは、左右で切り欠きの位置・大きさ・形状が異なっているが、これは「ビーム前端のけん引フック取り付け穴の有無によって衝突時のエネルギー伝達が異なることに合わせたもの」。またフロントサスペンションアッパーマウントの補強板には6000系のアルミニウム合金が用いられている。

ボルト締結が多用されたフロントまわり

 66kWhまたは91kWhの駆動用バッテリーをホイールベース間に搭載するBEVということもあり、高張力鋼板を積極的に採用。「590MPa級以上が60%以上で、ホットスタンプ材も約10%に達している」。

ダッシュパネルおよびフロントフロア。濃いグレーの部位がホットスタンプ材

 ホットスタンプ材の使用部位は「衝突時に変形させないゾーン」、具体的には濃いグレー色になっている、「フロントサイド・クロスメンバー、床上とフロア中央のメンバー、ダッシュパネル脇の斜めのメンバー、リヤサイドメンバーの前側に使用」。各ピラーに関しては「本体は1.2GPa材だが、内部にホットスタンプ材のレインフォースを入れている」。

各ピラーのインナーパネル。レインフォースにホットスタンプ材を使用

 そして、衝突時のバッテリー保護策として、スペイン・ゲスタンプ社の「ソフトゾーン」技術を採用。1.8GPa級のホットスタンプ材を用いたフロアクロスメンバー両端の一部をレーザーで焼きなまし、980MPa級に強度を落とすことで、「(側面衝突時に)バッテリーが搭載されていない車体外側の部位をクラッシャブルゾーンとし、乗員へ全部の衝突Gが伝わらないようにした」。


(文・写真=遠藤正賢 図=日産自動車)

ゲスタンプ社「ソフトゾーン」技術の概略図