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    間違いだらけの自動車修理 いしよしこれでよしwebバージョンvol,3

    相手部品が正常なら補給部品は無条件に取り付けできるとは限らない

    • #特集

    2022/10/19

     脱着・取替指数の前提で有名なフレーズに、取付相手の部品が正常というものがある。部品を脱着または取替する相手部品を修正する作業は脱着・取替指数に含まないことを示す言葉として用いられる。
     これが、拡大解釈されて相手部品が正常であれば、特に新品部品と交換する場合は取り付けに問題が生じることはないと考える旨があるようだが、実際はそうでない事もある。自動車に限らず工業製品には常に公差が存在し、組み合わせによっては手直しが必要になる場合もあるからだ。
     今回は、新品部品が取り付け相手のボデーにダメージがなくとも、何故単純に取り付けできないことがあるのかを解説する。


    ■脱着・取替指数は相手部品が正常でも新品パネルが取り付かないケースを否定していない


     まず最初に断っておくが、脱着・取替指数において相手部品が正常であることを前提に立つことや、事故で取り付け相手部品が損傷を受けていた場合の修正作業などが脱着・取替指数に含まれないことは、作業観測の観点から見て正しく、筆者自身はこれを支持していることを明らかにしておく。
     しかしながら、車体の側面を擦過したような傷や、いたずら傷でボデーの骨格側に明らかにダメージがなかったであろう事故であっても新品のドアパネルなど外板パネルが上手く取り付かないことがあることもまた事実だ。
     また、指数も相手部品が正常であった場合であっても取り付けに手直しが必要となるケースを100%否定はしていない。ただ、一般に新品部品が正常に取り付かない場合はボデー本体に何らかの寸法のズレが生じている可能性があり、そちらを先に確認することが優先されることはこれもまた、間違いではない。
     ここからは、ボデー本体側にダメージがないことが前提で、新品パネルの取り付けに支障があったケースについて記す。

    ■原因は部品の個体差

    純正部品のドアヒンジ取り付け部。ボルト穴が右側にズレている。補給部品のボルト穴が左側にズレていれば、正しく取り付かない恐れがある

     ボデー寸法が正規の状態であっても、補給部品のドアパネルなどが上手く取り付かないことはしばしばある。この原因は部品の個体差によって生じている。写真はある車両の純正部品(工場出荷時)のドアヒンジ取り付け部を撮影したもの。ボルトのネジ穴が右側上部に寄っていることが分かる。
     仮に届いた補給部品のネジ穴が左側下部に寄っていたとするとチリは合わないだろう。ボデー寸法が正規の状態であっても、それまで取り付いていた部品と補給部品との相性によっては調整が必要になることがある。


    ■アジャスティングボルトの設定を確認する

    左側が純正時に取り付いているセンターボルト。右側がアジャスティングボルト。アジャスティングボルトは首部が太くなっておらず、ヒンジの取り付け位置を調整できる

     こうした状況に備えて、ドアパネルなどのいわゆるフタ物と言われる部品にはアジャスティングボルトが設定されていることが少なくない。
     アジャスティングボルトはボルトの首部が呼び径のままのボルトのことで、補給部品として部品番号が与えられている場合と、修理書などにボルトの規格が記されているものがある。
     見積りソフトでは各社の掲載基準によってはアジャスティングボルトが設定されていても掲載していない製品もあり、その存在が見落とされがちだ。見積りソフトにも、修理書にも記載が確認できない時は、部品商に相談してみるのも良いだろう。
     アジャスティングボルトが見つからないからと、市販のボルトで間に合わせるのは危険だ。たとえサイズが合っていたとしても強度などの要求性能を満たしていない恐れがあるからだ。強度が足りなかった場合、部品の脱落や事故被害の拡大などの原因となることがある。

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