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    エコウエルディング、 経営陣刷新で第二創業期へ

    • #トピックス

    2022/09/15


    自動車補修関連製品の開発及び製造、自補修溶接に関する技術教育を事業の柱とするエコウエルディング。このほど、エクシード(神奈川県愛甲郡)、デンゲン(大阪府大阪市)、ユタニ工業(同東大阪市)の 3社体制に移行するとともに経営陣も刷新した。
    そこで同社の沼田明康CEO、出資企業であるデンゲン・樋上一誠社長、ユタニ工業・湯谷友章社長に話を聞いた。


    今年からはデンゲン・桑原力也氏(左から4人目)、ユタニ工業・西野良幸氏(同2人目)が取締役に就任し、沼田明康CEO(中央)を支える。樋上一誠社長(右端)、湯谷友章社長(左端)は監査役として参画する

    自補修関連製品の共同開発を目的に設立

     自動車補修溶接の安全と環境をテーマとして、2009年に設立した同社。設立の経緯について沼田CEOは「高張力鋼板の採用拡大、外板の薄板化に対応し得る自補修製品を開発するため」と語る。
     少量多品目な生産が一般的な自補修市場においては、顧客の細かなニーズに応じた製品を単独で製造するのはハードルが高い。そこで、自補修溶接に明るい他社に呼び掛け、高品質な製品を安定して製造・供給する体制を整えることにした。

     その後、各社の経営環境変化や自補修溶接に関する法規制の改正を受け、体制を見直し。今年からはカーアフターマーケット向け製品を各種取りそろえるデンゲン、イタリア製工具や溶接機の代理店を務めるユタニ工業の2社を迎え、新たなスタートを切った。

     このうち、ユタニ工業は建機部品の製造や修理を主業としており、自補修業界とのつながりがさほど深くはなかった。2019年より補修用溶接機メーカー・チェボラ製品の販売代理業を開始し、自補修業界に本格参入。「エコウエルディングの経営に加わることで、チェボラ製品ユーザーのフォローのみならず、新規顧客獲得の足掛かりにもなる」(湯谷社長)と前向きにとらえている。
     また、スポット溶接機やフロンガス回収機などを販売するデンゲンの樋上社長は「自動車補修は車両のライフスタイルを延ばし、環境負荷低減に寄与する。SDGsが推進される今、自補修溶接にまつわる様々な課題の解決は不可欠である」と考えている。

    車体の素材や引っ張り強度に適した溶接ワイヤを開発

     3社協業によってまず取り組んだのは、溶接ワイヤの開発・製造である。溶接ワイヤは外板の素材、引っ張り強度に合わせて使い分ける必要があるが、「現在出回っている製品の中には、特に高張力鋼板の補修溶接に不向きなものもある」(沼田CEO)。そこで補修溶接によって生じる鋼板の材質変化、硬化・軟化、応力の集中の3点への対応を主眼に置いた溶接ワイヤを開発。これらの課題を解消し、溶接割れや歪み、強度低下を抑える。
     一例を挙げると、超高張力鋼板向けに開発した「EC-YGW16」は、低電流でもアークが安定するため熱影響を軽減させられる。溶け落ちや歪みが起こりにくく、プラグ溶接のみならず外板の突き合わせ溶接にも適する。

    主力製品の一つである「EC-YGW16」は、このほどパッケージデザインを刷新。包装にはアルミパックを採用し、 保存性を高めた

     また、防炎性と柔軟性に優れた保護手袋やスパッタシート、ノズルの先端に吹き付けるスパッタ付着防止剤といった製品を通じて溶接環境の改善と安全衛生の重要性も啓蒙していく。
     世界的に強化される燃費規制に対応すべく、外板の高張力化や薄板化は継続している。「理論上、鋼板の引っ張り強度は外板は1,500MPa級、内板骨格は2,500MPa級までは高められることが分かっている」(沼田CEO)ことから、それらが採用された車両の修理技法に対応し得る溶接ワイヤの開発を進める方針である。

    溶接作業用グローブなどの安全衛生関連用品も取り扱う

    自補修溶接の技術教育や情報発信を強化する

     昨今は外板の薄板化が進んだことで、歪みや溶け落ちなどの溶接不良が起こりやすい。一方で自動車用の高張力鋼板には化学成分に関する規格が存在せず、溶接条件はカーメーカーによってまちまちである。
     沼田CEOは、この現状が再現性の高い平準的な技術教育を難しくしていると指摘する。「結果として教育を受けるチャンスに恵まれず、基礎的な知識もないのにいきなり実務に臨まざるを得ない技術者も少なくない」。そこで今後は事業のもう1つの柱である、自補修溶接の技術教育に注力する。特にアーク溶接に関しては、トーチの角度や動かす方向、速度、動かし方などを習得するために相応の技術指導と訓練が求められる。技術者に対しては、まずはテストピースなどで訓練を重ね、基礎をしっかり身に付けてほしいと強く望んでいる。

     昨今は溶接の熱影響、溶接品質の管理などが盛んに行われ、補修溶接の品質に対する関心は高まっていると見ている。一方で特化則改正による溶接ヒューム対策の義務化、作業環境改善によるコンプライアンス強化など、求められる対応は山積している。そこで対面での講習会、Webサイトなどを通じて情報発信を強化し、自社の認知度アップに努める。

     溶接のプロ3社が集結し、第二創業期を迎えた同社。それぞれが持つ豊富なノウハウに裏付けされたソリューションを基に、自補修溶接の課題解決に全力で取り組む。

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