JOURNAL 

    街の車屋さんは岐路に立たされている

    【BSRweb独自連載】洗車で始める顧客獲得 第1話

    • #一般向け
    • #その他

    2022/07/01

     「変わっていかないといけないのは分かっているけど、時間がない」――つい、そんな言葉が口をついて出ていませんか?
     100年に一度の大変革期と言われる自動車業界。進化する自動車に合わせてカーアフターマーケットのあらゆる業種が変化を求められています。市場環境が激変する中、どんな業界や業種であっても、変わらないままでいては生き残ることはできません。
     
     重苦しい書き出しとなりましたが「この手の文章は不安を煽るだけで、結局具体的にどうするか?は何も語ってくれない」と思った方もいらっしゃるでしょう。
     私は変革期にある街の車屋さんに対し、私自身の経験や、自動車業界で活躍する方々との交流から得た情報や意見、アイデアを発信することで、事業を続ける上でのヒントにしてもらいたいと考えています。

     キーワードは「今」「未来」です。現状を読み解き、未来を志向していくのに本連載がお役に立てば幸いです。

     申し遅れましたが、私は株式会社本荘興産の平井と申します。業務用の洗車、カーコーティング製品といった、車の美装を専門とするメーカーです。
     ただし、車好き、磨き好きが高じて商売を始めたというわけではありません。高度成長期の終焉という荒波に呑まれて自動車整備工場からガソリンスタンドへと転換、そして生き残りのための収益源を模索したのが出発点です。
     
     つまり、変革期においてどう生き残るか? いかに成長していくべきか?――この危機感をビジネスの原点としています。

    主力の「ウォッシュマンシリーズ」をはじめ、車の美装にまつわる製品を扱っています

     さて、冒頭の話に戻りましょう。「時間がない」に限らず、「○○できない」理由は無数に思いついてしまうものです。資金がない、人手がない……
     しかし、本当に尻に火がついてしまえば、どんな理由があれ走り出さなければなりません。なのに、なぜ足が止まってしまうのか?自動車業界の右肩上がりが終わって久しいとは言え、国の基幹産業であることに変わりはありません。これは業界の重要な利点ですが、裏を返せば問題を先送りしてしまう悪しき習慣にもなり得ます。

    総整備売上高の推移。この数年は5兆円台を維持しているものの、2021年度には事故整備売上高が1兆円を割り込むなど厳しい状況が続く(出典:日本自動車整備振興会連合会「自動車整備白書」)

     法で守られた車検制度、保険と連動した鈑金塗装といった安定的な収益構造があることにより、「先のことはどうにかなるさ」と思っていませんか?
     これまではその考えも通用したのかもしれません。しかし、ディーラーが新車を売る、ガソリンスタンドは燃料を売る、工場では整備をする、それだけで済んだ時代は終わろうとしています。
     
     ディーラーは車検やボデーコーティングなどアフターサービスでの収益を重視し始め、ガソリンスタンドは個人向けカーリースを扱い始めて車両販売の領域に参入し、と業種ごとの境界は急速に崩れました。
     崩れたのは業種の壁に限らず、業務ごとの壁もです。これまでは本業の「おまけ」の扱いに過ぎなかった「洗車」に焦点を当てたビジネスが立ち上がるという逆転現象さえ起こっています。

    新車ディーラーの収益構造の一例。点検、車検などのサービス部門の売り上げは各社とも10%を超える ※上場ディーラーの決算資料を基にBSRweb編集部が独自作成

     今成長している事業者に共通しているのは今のビジネスと未来への準備、この両方に具体的に取り組んでいることです。

     「今順調なのか、厳しいのか?」、「未来に向けて希望が持てるのか?」……これらには必ず理由や原因があります。「変わらなくては!」という掛け声だけで終わらないためには、現状分析や今後の具体策についてきちんと追求する必要があります。その時だけわいわい盛り上がって、結局問題を先送りにしては意味がありません。

     そこでどんな車屋さんでも日常的に行われている洗車をフックにして、お客様との接点を増やしたり、新たな顧客層を開拓したりすることを検討していただきたいと思います。
     特に手洗い洗車であれば、初期投資はほとんどかかりません。今やっている洗車作業を少し変え、上手にお客様へ宣伝していけば、洗車代をいただきながら集客できて売り上げも確保できるチャンスがあります。

     それに必要なのは、洗車に関する「今」を理解し、「未来」はどうしていけば良いのかを考え続けることです。まずは「今」を理解するため、次回以降は洗車を取り巻く動向についてお伝えします。




    著者プロフィール



    平井新一(ひらいしんいち)
    株式会社本荘興産 代表取締役社長
    岡山県倉敷市出身 1974年生まれ

    大阪の音楽系専門学校を卒業後、北海道の美装専門店での現場修行を経て1999年に同社へ入社。営業担当として全国を飛び回る傍ら、国産カーメーカーの純正ボデーコーティングの企画・開発にも関わる。2014年より現職。
    近年は洗車ビジネスに関するセミナー講師やクライアント企業のブランディング・PRのサポートなどにも取り組んでいる。

    ログインして コメントを書き込む
    コメント入力者
    •  
    • ※こちらのお名前がウェブサイトに掲載されます。

    コメント

    投稿する