JOURNAL 

    電話が鳴る、急増する『あなたの工場売りませんか』の実態

    車体整備業界のM&A事情に迫ってみる BSRweb編集長石本 前編 

    • #インタビュー

    2021/10/08

    過去に 6社(BP関連:4社、その他:2社)のM&Aを経験し、日本一大きなBP事業規模となったをソフト99オートサービス元社長、現取締役相談役の小宅一氏と

    東証一部上場会社のM&A部門責任者として、数々の企業買収を担当。現在独立して事業承継、経営サポートのポータルサイトを立ち上げ、M&AのアドバイザーとしてBSRwebとコンテンツ連携もいただいておりますノウハウズの錦織社長をお招きし、

    車体整備工場のM&Aのリアルについて
    ざっくばらん、かつ大いに語ってもらう企画です!
    本日はよろしくお願いいたします。

    左から 小宅相談役(ソフト99オートサービス)、石本(BSRweb編集長)、錦織社長(ノウハウズ)、

    石本
    今回は、「電話が鳴る、急増する『あなたの工場売りませんか』の実態」というギリギリ釣りにならない大げさなタイトルで車体整備業界のM&A事情に迫ってみます。

    8月4日~9月10日まで、BSRwebでアンケートを実施いたしました。M&Aについての質問項目も設定したところ、鈑金塗装工場回答者の19%がM&Aについて興味関心があると回答。内訳として全体の9.5%が売却、9%が買収情報に興味があると回答されました。現在鈑金塗装工場は全国約27000件であることから、そのまま当てはめるのは乱暴ながらも、現時点で全国5400工場でM&Aを考えている工場があるかも…とざっくり予測できます。衝撃的ではあるものの、想像ができる結果といえるでしょう。



    石本
    最近、鈑金塗装工場経営者の方々との話の中で、皆様口をそろえて「工場売りませんか」と売却を勧める電話が多いと聞きます。


    錦織社長
    長引くコロナ禍のため、M&A市場は今は買い手市場傾向になってはいるものの、M&Aコンサルタントは売り手情報の掘り起こしに注力しています。彼らの多くは不動産でいう仲介サービス業。売り手からも買い手からも仲介料をもらう仲介というビジネスモデルが多いところがあります。M&A仲介では、日本の上場企業でもトップレベルの生涯年収を誇る企業もあるようです。

    石本
    買い手と売り手双方から手数料を受け取り、M&Aの調整、折衝するのは非常に難しい業務であることから、それだけの報酬が支払われるわけですね。
    M&Aの仲介手数料はいくらもらえるのでしょうか。

    錦織社長
    着手金と成果報酬などがありますが、成果報酬では買収価格の3%~5%近くを買い手、売り手双方からもらう場合があります。5億円の売買なら1500万~2500万円、決まれば利益率は相当高い案件もあるでしょう。
    担当者ごとに能力の違いがあるようで色々現場では担当者によって対応が違ったということを多く聞きます。M&Aアドバイザーに必要な国家資格は現在は無く、近年経験も知識もない担当のためにトラブルになるケースが現場であるようです。

    石本
    仲介トラブルですか…。聞いたことはありますけど、ちょっと怖くなってきました。売買の経験が豊富な鈑金塗装工場の社長なんてそうそういないでしょうから、困りますね…。

    錦織社長
    仲介というビジネスモデルが悪いわけではありません。当然相当な労力がかかることがあり、M&Aは簡単に見えて手続きや契約を間違えると売手、買手とも大損することがあります。一番重要なのは、M&Aの担当者の見極めです。当社ではM&Aアドバイザーを見極める面談用チェックリストなども出しております。

    小宅相談役
    M&Aには様々な形があります。われわれも当初は株式譲渡によるM&Aで買収を勧めていましたが、帳簿上わからない債務、簿外債務が買収成立後発覚し、トラブルになったケースもありました。その後の案件は営業譲渡によるM&Aに切りかえました。

    錦織社長
    残業代未払い等のサービス残業などの労務の問題は隠れたリスクであり、これも近年問題になっています。また法律改正からリスクも拡大しています。買収後、このようなことが発覚した場合、新しい株主が対応することになるため、注意が必要ですね。

    石本
    事前に調べ、準備しておくことが必要ですね。
    しかしながら、結局のところM&Aについて興味を持つ工場経営者の関心は、いったい自分の会社はいくらで売却できるのか、いったいあの工場はいくらで買収できるのかということにつきるかと思います。


    錦織社長
    わが社が運営し、BSRwebとも連動しているノウハウズのWebサイトでは通常40万~100万もする株価算定が無料でできる機能を搭載しています。ご興味のある方はぜひご活用していただきたいと思います。現在550社が利用をしています。

    石本
    BSRwebの宣伝もありがとうございます。


    小宅相談役
    M&Aについては、同業他社が車体整備工場を買収するというよりも、周辺業界(ディーラー、カーディテーリング、カスタム等)からの買収が増えるのではないかと思います。鈑金塗装業の足し算より他業種と連携してシナジーを生み出す方が可能性が大きいと感じるのではないでしょうか。

    石本
    なるほど。当然ながら簿外債務も含め、M&A前に事業データについていろいろと調べる必要がありますね。

    小宅相談役
    買収を希望している経営者の多くは倒産しかけの工場をつかまされたくないと思うのは確かですが、利益がしっかり出ている優良工場の買収額は当然ながら跳ね上がります。
     労働集約型の業種の中で安定した利益を出す工場では経験上「伸びしろ」が少ないというリスクもはらんでいます。利益が出ている優良工場に見えながら、実は、そこにコンプライアンスコストが入っていないケース等も少なくないと思います。

    石本
    伸びしろがあったとしても、赤字企業の買収には勇気がいりますね・・・

    小宅相談役
    赤字企業のM&Aは、純資産に満たない金額で売買されるケースも多く、再生出来る可能性があれば双方にとってプラスになることが多いと思います。特に鈑金塗装工場のM&Aは再生ビジネス的な要素も大きく、その工場の現状を把握しM&Aによって生み出されるプラス要素と考えられるリスク(顧客の歩留まり、職人の離職等)を考慮し判断する必要がありますね。

    石本
    なるほど。

    小宅一 相談役

    錦織康之 社長

    錦織社長
    それは売り手側にも言えることですね。赤字企業だから・・・と売却してもお金にならないかというとそれは大間違いで、小宅相談役のお話の通り、保有する顧客とその取引、工場能力を含めて解決策を持った買収側のニーズにマッチすれば、見合う買収価格を提示してもらえます。


    石本
    赤字でも価格提示してもらえるんですか。

    小宅相談役・錦織社長 

    (声をそろえて)もちろんです。



    次回は近日中に後編をUPします。
    お楽しみに


    今日のまとめと補足
    ✔政府は10年でM&Aを10倍の目標としている。M&Aの手続きは難しく、また交渉において最適な価格で行われるかどうかに不安は残り、失敗はかなり多い。
    ✔黒字で倒産する企業もたくさんおり、後継者不在の企業が多く、その企業を継承する動きは活発化している。
    ✔8割の売手経営者は残される従業員の処遇を気にしている
    ✔赤字であってもクライアントの契約や設備、従業員のスキルによっては価値が出る場合がある。
    ✔M&Aのアドバイザー業務には仲介とFAがあり、契約や料金に注意が必要
    ✔担当するM&Aアドバイザーによって成否が決まるといっても過言ではない





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