JOURNAL 

    田島綜合法律事務所 田島清二弁護士

    損害賠償の知識と保険会社の対応方法を広め、業界を良くしたい

    • #インタビュー

    2021/03/15

    田島清二弁護士は、2014年に司法試験を合格後、2015年に東京都内の弁護士法人へ入所。そこで現場経験を積み、2017年に個人事務所を設立した。同所は自動車のほかバイクやモータースポーツに関する案件が多いのが特徴。その中で、物損事故による自動車の修理費用に関する依頼も受ける。弁護士の視点から見た業界で起きるトラブルについて意見を聞いた。

    田島綜合法律事務所 田島清二弁護士(第一東京弁護士会所属)

    ――物損事故の依頼を受け始めたきっかけは 

     弁護士という職種は、クライアントと綿密に話し合いながら進めていくのが基本。その中でクライアントとの相性があり、個人的にはオフィスでスーツを着た相手より工場でツナギを着た技術者と話すほうが馬が合った。また、所内に元オートバイプロライダーを経て、損害保険会社に勤務した経験を持つ事務員がいることも要因の一つに挙がる。
     弁護士にとって物損事故は、経済的利益が小さく報酬を得にくい上、車体修理に関する知識不足のため敬遠されがちなジャンルの一つ。しかし、相性の良さと知識を活かし、あえて物損事故の依頼を受け始めた。今では、依頼される交通事故案件のうち多くが物損事故関係である。

    ──車体修理工場にとって物損事故の一番の問題点とは

     間違いなく修理費用の協定と過失割合がある場合の代車費用の損害賠償請求の二つ。修理費用協定で揉めるケースでは、そもそも損害賠償請求とはどういったものかを理解していない工場が多いように見受けられる。対物賠償とは、加害者が民事上の損害賠償責任を負う分のみを支払い、その金額は必ずしも現状回復費用とは異なることを念頭に置いておかねばならない。
     後者は、過失があると代車費用は支払えないと保険会社から連絡が来たとよく耳にするが、実際には弁護士が介入すると0円回答とはならないことも多い。使用目的や車種、日数、日額を検討した上で交渉していくことにより支払われるケースがほとんどだ。
     これらは工場と保険会社、双方の考え方の違いに起因するトラブルだと言える。互いの考え方を理解した上で示談交渉すれば、スーパーカーなど特殊な車両を除いて修理工数がある限り、訴外で示談できるはずだ。

    ──では、どのような対策を講じる必要があるのか

     保険修理の割合が多くを占める業界にあって、工場の皆さんには損害賠償とは何かを勉強する姿勢を持っていただきたい。鈑金塗装の技術を習得するのに、塗料や鋼板の性質から使用する工具の特徴に至るまでの基礎を学んだように、まずもって損害賠償の基礎を理解する必要があると考える。
     また、加害者側である保険会社の立場も理解する必要がある。保険会社は任意で工場と交渉に臨んでおり、本来は必ずしも賠償に応じる義務はない。根拠のある見積書を作り、工程ごとにきちんと写真を収めて、相手方が見やすく損害と修理の整合性が図れれば無用なトラブルは起きないはずだ。

    ──読者に一言

     どちらかと言えば車体修理工場は弱者の立場にある。しかし、手を差しのべる人は少ない。だからこそ当所は、NIKKEN(大阪府大阪市)が主催する講習会に講師として赴き、損害賠償の基礎知識や保険会社の考え方を周知していくことで、工場の皆さんと力を合わせて業界を良くしていきたい。

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