JOURNAL 

    シネマエンドレス「銀河鉄道の父 」

    無名だった宮沢賢治を支えた、父と家族の絶対的な愛の物語

    • #その他

    2023/04/15

    あらすじ

     岩手県で裕福な質屋を営む宮沢政次郎の長男・賢治は家業を継ぐ立場でありながら、適当な理由をつけてはそれを拒んでいた。

    それに理解を示し、政次郎の進学を許すも学校卒業後も家業を継ぐことなく、農業大学への進学や人工宝石の製造、宗教への傾倒と我が道を突き進む賢治。政次郎は厳格な父親であろうと努めるもつい甘やかしてしまう。

    やがて、最愛の妹であるトシの病気をきっかけに筆を執る賢治だったが……。

     今もなお唯一無二の詩や物語で、世界中から愛されている宮沢賢治。だが、生前の彼は無名の作家のまま、37歳という若さで亡くなった。

    そんな賢治は「ダメ息子だった」という大胆な視点から、賢治への無償の愛を貫いた宮沢家の人々を描き、第158回直木賞を受賞した「銀河鉄道の父」(著:門井慶喜)を、「八日目の蟬」など、人と人との触れ合いや絆を通して、人生の豊かさを描いてきた成島出監督が、実写化。

    心を揺さぶられ熱い涙があふれだす、希望の物語。

    ©2022「銀河鉄道の父」製作委員会

    筆者の推しどころ

     本誌2月号で紹介した「ファミリア」の成島出監督が役所広司と再びタッグを組み、息子である賢治に振り回されながらも愛を持って接し続けた父親を熱演。

    宮沢賢治を演じたのは日本最高峰の若手俳優である菅田将暉。

    実写化に当たり、成島監督が「政次郎が役所広司、賢治が菅田将暉。どうしてもこの二人でやりたい」とそれぞれの事務所に直談判しただけあり、両社の演技は特筆もの。

    賢治のやりたいことに最初は反対しつつも結果的に折れて許し、最終的には作家となった賢治を誰よりも応援し、一番のファンになっていく政次郎の姿どこかチャーミング。

    一方で、何者にもなれずに進むべき道を探して様々なことに挑戦し、もがき葛藤する賢治の姿は、筆者のような人生に迷う人の心に突き刺さるだろう。

    また、宮沢家の家具や、賢治の愛用品を忠実に再現した小道具の作りにも注目してもらいたい。


    雨ニモマケズ、
    風ニモマケズ、
    雪ニモ夏ノ暑サニモ
    残業ニモマケヌ、
    丈夫ナカラダヲモチ、
    慾ダラケノ人生を送る筆者は、
    鑑賞後、ほんの少しだけ泣いた。

    自身の生き方と終わり方、そして決断の重要さを再認識させられ胸が熱くなると同時に苦しくなる家族の物語。

    銀河鉄道の父
    監督:成島出
    キノフィルムズ配給
    2023年5月5日(金)より全国公開

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