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洗車が変われば店舗が変わる
【BSRweb独自連載】洗車で始める顧客獲得 第3話
2022/08/01
前回お話ししたように、「洗車で始める顧客獲得」は大半のガソリンスタンドで採り入れられています。燃費向上やEV普及で低下するガソリン収益を補うべく、洗車に力を入れているのです。しかし、旧来の手洗い洗車はハードワークの代名詞とも言え、高齢化したスタッフの離職、若い人材の採用難など、人手不足に拍車をかけてしまいます。自動車整備、鈑金塗装工場が安易に真似することはお勧めできません。
手洗い洗車を収益化するには、洗車作業をなるべく楽に、かつ効率良くこなす必要があります。今回は、それを実践して見事収益化した株式会社TANAKAの例をご紹介します。
株式会社TANAKA(旧:田中石油ガス)は、人口10万人にも満たない鹿児島県薩摩川内市で3軒のガソリンスタンドを運営しています。大手カーリースFC・カーベルが展開する「新車市場」に加盟し、わずか5年で販売台数全国トップという実績をたたき出しました。この成功の背景には、手洗い洗車の効率化が鍵を握っています。
株式会社TANAKA Dr.Drive 向田店(左)、新車市場 薩摩川内店
洗車が変わればスタッフに活力が生まれる、車が売れる
同社がそれまで志向していたのは、本格手洗い洗車です。スタッフが汗をかきながら一生懸命洗う姿をお客様にアピールするのが好ましい、という体育会系的発想を持っていました。
この考え方は決して珍しいものではなく、今なお多くのガソリンスタンドでは気合と根性でこなす手洗い洗車が良しとされています。
そのため私が提唱する洗車は、当初受け入れてもらえませんでした。そこで当社が行う1泊2日の洗車研修を通して、実際に楽で効率的な洗車を体験いただきました。研修から戻ったスタッフたちは「この洗車方法でやってみたい」と口をそろえ、同社の田中大地専務に直談判。年末の洗車シーズンが迫っている中、洗車方法の改良に乗り出したのです。
その結果、スタッフ数は歴代最低という厳しい環境だったにもかかわらず、過去最高収益を達成。その年の離職者もゼロ、という快挙を達成しました。
「額に汗して辛そうに洗車する姿ではなく、楽しそうに笑顔で洗車している姿が売りになる」と考えた田中専務は、女性スタッフを増員。小柄な女性が楽しそうに洗車している姿が目に付けば、女性客の来店につながると考えたのです。
疲れにくい洗車方法によって余力ができたスタッフたちは、その分カーリースや高額なボデーコーティングを積極的に提案するようになりました。疲れにくいから集中できて品質が上がり、高品質ゆえに自信を持って勧められるという良いサイクルが回り、商談数と成約率は上昇しました。
同社の場合は個々人が得意なサービスメニューを持ち、自信を持って顧客に勧めるという分業化が自然に進み、1人のお客様に対してチームで対応する体制になっています。
それまではどのサービスも専門性がなく、中途半端な状態でした。これではお客様に自信を持って勧められるサービスが1つもなく、単価アップにはつながりません。単価アップ、リピート率アップという目標を達成するには、まずはどれか1つのサービスをマスターできるよう訓練し、お客様に提案・受注する、というアプローチもあると思います。
年末の繁忙期に過去最高収益を達成後、女性スタッフを増員した
たかが洗車、されど洗車
同社の成功例を受け、カーベル本部では「洗車市場」というビジネスが立ち上がりました。当社でもカーベル加盟店に対して洗車研修を随時行っており、今後は全国の新車市場加盟店で高品質な手洗い洗車が受けられます。
「顧客を囲い込むには車を売らなくちゃ……でもどうしたら?」とお悩みの方は多いと思います。それには洗車を通じて店舗のことを知ってもらい、来店を増やすのが先決です。
何度も来店いただくことで心理的ハードルを下げ、お客様にとって車に関する相談を気軽にできる存在になれれば、他の商品の提案もしやすくなるでしょう。これまであなたが直面していたセールスの「難しさ」を解消してくれるのは、洗車かもしれません。
カーベルが立ち上げた「洗車市場」
取材協力:株式会社TANAKA
http://www.tanaka-eng.com/
著者プロフィール
平井新一(ひらいしんいち)
株式会社本荘興産 代表取締役社長
岡山県倉敷市出身 1974年生まれ
大阪の音楽系専門学校を卒業後、北海道の美装専門店での現場修行を経て1999年に同社へ入社。営業担当として全国を飛び回る傍ら、国産カーメーカーの純正ボデーコーティングの企画・開発にも関わる。2014年より現職。
近年は洗車ビジネスに関するセミナー講師やクライアント企業のブランディング・PRのサポートなどにも取り組んでいる。
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