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シンナー値上げは止まらない?
ナフサ価格推移と、ホルムズ海峡の事実上封鎖が自補修現場に与えうる影響
2026/04/10
■ページ目次
1.ワーストケースの現実化
2.歴史的な円安と事実上のホルムズ海峡封鎖による影響
①構造的な問題
②現在進行形の危機
3.1960年からのナフサ価格推移
4.自補修現場を直撃しうるリアルな影響
1.ワーストケースの現実化
近年、自動車補修用塗料やスプレーガンの洗浄用として使用するシンナーの値上げが続いており、多くの車体整備事業者の利益を圧迫している。
結論から言えば、このシンナーの高騰は一時的な現象ではないだろう。2026年に入っても依然として続くホルムズ海峡の実質的な封鎖により、シンナーの原料となるナフサ調達網は壊滅的な打撃を受けている。先日のニュースでは”2週間の停戦”が報じられ、一時的な緩和も期待されるが、情勢は極めて流動的であり、再び供給が断たれるリスクと常に隣り合わせだ。もはや企業努力で吸収できる範囲は超え、現場では適正な工賃・材料費への価格転嫁と、現場レベルでのシンナー使用量の根本的な削減へと舵を切る必要もあるだろう。
2.歴史的な円安と事実上のホルムズ海峡封鎖による影響
なぜシンナーはこれほどまでに値上がりし、下がる気配がないのか。その最大の理由は、シンナーの主原料であるナフサ(粗製ガソリン)の調達コストが、2つの巨大な危機に直撃されているためである。
①構造的な問題:「日米金利差」による歴史的な円安
日本はナフサの多くを輸入に頼っており、取引はすべて”米ドル建て”(米ドル:USDを基準に設定し決済する方式)で行われる。これまで日米の金利差を背景とした円安が続いていたが、このたびの中東情勢緊迫化により、4月7〜8日の東京外国為替市場では”有事のドル買い”が加速。2026年4月10日現在、為替は1ドル=158〜159円台にまで達している。原油価格高騰とのダブルパンチにより、為替変動だけで輸入コストが数年前から約40%以上も跳ね上がった状態が固定化しつつある。
② 現在進行形の危機:ホルムズ海峡封じによるナフサ供給の断絶
さらに決定的なのが、2026年2月末から本格化したホルムズ海峡危機である。日本の原油の9割以上が通過する同海峡において商船への攻撃が相次ぎ、邦船大手3社が通航を停止。日本関係の船舶数10隻が足止めを食らう”事実上の封鎖状態”に陥った。
2026年4月7〜8日にかけて米国とイランの間で2週間の停戦が合意され、一時的な航行再開の兆しは見えたものの、依然として包括的な最終合意への道筋は不透明である。さらに、海峡を通航するための船舶保険料率が平時の4〜6倍に暴騰しており、ナフサの調達コストはかつてない水準へ膨れ上がっている。末端のシンナー価格へのさらなる価格転嫁はもはや避けられない情勢。
3.1960年からのナフサ価格推移
ここでナフサ輸入価格(国産基準価格)が歴史的にどのように変動してきたのか、1960年から現在までの推移をグラフで見てみたい。
グラフの通り、現在のナフサを取り巻く環境は湯水のようにシンナーを使えた1990年代とは別次元となる。先がまだ読み切れないなか、これが自補修現場にどのような影響を与えているのだろうか。
参考:石油製品需給動態統計調査
4.自補修現場を直撃しうるリアルな影響
ナフサや関連原材料高騰によるシンナーの値上げは、単なる会社の経費上昇という側面だけではなく、塗装ブースの中でミリ単位の仕上がりを追求する技術者にとっても作業に影響を与えうる。
①スプレーガン洗浄と脱脂
1日に何度も塗装する技術者にとって、スプレーガンの洗浄や、塗装前のシリコンオフによる脱脂は手を抜けない基本工程。しかし「シンナーの使用量を減らそうね」というプレッシャーが強まっている現場もあると言う。限られた量のシンナーで無理にガンを洗えば、カップ内に残った微小なメタリック粒子が次のソリッドカラーやクリヤーに混入するリスクが上がる。技術者にとっては、コスト削減と品質維持の板挟み状態になりうる。
②シンナー希釈率の調整
塗料のタネを作る時にシンナーの使用量を抑えることで、揮発速度に誤った調整を加えることは致命的。微粒化不良によるゆず肌やミストのパサつき、揮発異常によるツヤ引けや白化(ブラッシング)、メタリックの戻りムラといった塗膜不良を引き起こす直接原因となりうる。一度でもやり直しになれば、足付けからマスキング、ベース、クリヤーまで全てをやり直すことになり、技術者の貴重な時間を浪費するだけでなく、モチベーションの低下にもつながりかねない。
シンナー値上げは自補修用溶剤系塗料の価格高騰と廃溶剤の処理費アップにも影響を及ぼしている。この動きが工場の溶剤から水性への塗料の切り換えに繋がっているかはまだ調査中だが、現場の技術者からは「長年培ってきた溶剤塗料の感覚をアップデートする理由が思ってもいない角度から急に来た」との声も。一方、水性塗料に切り換えた工場では、溶剤系塗料との乾燥性の違いを受けて工程管理を再考し、ブース回転率を維持するための方法を思案しているケースも見られる。まだ影響は収束しない今回の値上げについて、引き続き追っていきたい。
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